大義名分 第10話
…ガチャッ!!…ガチャガチャ…ッッッッ!!!!
ガタガタと台のようなものが大きく揺れる音と共に、冷たい金属がガチャガチャと擦れ合う音が聞こえる。そして、
「…ん…ッ!!…く…ッ!!…ふ…ッ、…んんんん…ッッッッ!!!!」
と、沢村が低い声を上げ、体を捻ったり、跳ね上げたりを繰り返す。
「…取れ…、…ない…ッ!!」
今、沢村は無機質な台の上に両手両足を拘束され、もがいていた。両手は頭上で、両足は大きく広げられ、X字に拘束されている。
「…く…っそ…オオオオオオオオ…ッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ボロボロになったコンバットスーツ。あちこちが焼け焦げ、回路が剥き出しになっている。その辛うじて残っている銀色の部分が、沢村が体を動かすたびにキラキラと輝く。頭部を覆っていたマスクは既になく、鬱血した沢村の顔が焦りの色を濃くしていた。
「無駄ですよ」
その時、沢村の目の前にヌッと姿を現した神官ポーが静かに言った。その背後にはジン達フーマ5戦士がいる。
「…神官…、…ポー…ッ!!」
「…フンッ!!」
その顔には余裕の笑みが浮かぶ。
「あなたがどんなに足掻こうとも、その鎖は決して外れない。何故なら、その鎖にはあなたによって倒されて行った多くの不思議獣やミラクラーの怨念、そして、幾度となく痛い目に遭わされた我々の恨みが込められているのですから…!!」
その時だった。
『よくやった、ポーよ』
地の底から聞こえて来るような低い声。その声にポーははっとすると、
「お爺様ッ!!」
と声を高くした。
『よくぞ、シャイダーをここまで追い詰めた。フーマの大勝利は最早、目の前だ。あとはその者をお前達の好きにするが良い』
そう聞こえた時だった。
「…いいえ!!」
ポーが厳しい目付きで沢村を睨んでいる。
「この者に対して、我々は死刑を宣告いたします!!」
「…何…ッ!?」
沢村が一瞬、ぎょっとした表情を浮かべる。
その時だった。
「シャイダー。お前、男なんだろ?だったら、今までお前がやって来たことの報いを受けるのは当然のことじゃないの?」
ボーイがニヤニヤしながら沢村が拘束されている台の上に腰を下ろす。そして、一際意地悪い笑みを浮かべたかと思うと、
「男だったら、アレも付いているはずだよねッ!?」
と言ったかと思うとシャイダーのコンバットスーツの足の付け根部分とスーツの間に出来た僅かな隙間に手を忍ばせる。そして、その手がその中に息づく柔らかいものをギュッと握ったその瞬間、
「んあッ!?」
と、沢村は目をカッと見開き、体をビクリと跳ねらせ、素っ頓狂な声を上げた。
「ほら、やっぱりあるじゃないか。でも、恐怖のあまり小さくなっているみたいだね!!」
シャイダーのコンバットスーツの中に入り込んだ右手がその中にある柔らかいものを捕らえ、クニュクニュと揉み込む。そのたびに沢村は、
「…あ…ッ!!…あッ!!あッ!!あッ!!あッ!!」
と短い声を上げた。
その途端、ジン達は火が付いたように笑い出した。
「…コッ、…コイツ…ッ!!…こんな状況で…、…か…感じて…やがる…ッ!!」
「…さ…、…さっすが、宇宙刑事だああああ…ッッッッ!!!!」
ダイとブンが涙を流して笑い転げる。
「あ〜あ。とうとう、シャイダーも年貢の納め時かぁ…」
「まぁ、今までオレ達の多くの仲間を殺して来たんだから、満足じゃないの?」
「今までご苦労だったね、宇宙刑事さんッ!!」
ジン、ダイ、ブンが続けて言うと、
「…オレを…、…どうする気だ…ッ!?」
と、顔を真っ赤にした沢村が怒鳴る。
「簡単なことだよ。死刑さ、死刑ッ!!」
「けれど、簡単には殺してあげないよ?第一、さっさと殺しちゃったら、面白くないでしょ?」
ダンとボーイがニヤニヤしながら言う。
「これこれ、お止しなさい」
ポーが静かに声を発する。そして、沢村を見下ろすと、
「あなたをじわじわと痛め付け、じっくりと屈辱を味わわせながらその体から全てのエネルギーを奪って差し上げます」
と言った。
「…オレの…、…エネルギー…?」
「ええ。あなたが二度と、我々フーマに刃を向けることが出来ないように」
ジャラッ!!
ポーは大きな水晶が付いた、頭の大きな杖を振り翳した。そして、
「フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライッッッッ!!!!」
と、あの忌まわしい呪文を唱え始めた。その瞬間、
「うがああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と、沢村は目をカッと見開き、体を仰け反らせて叫ぶ。
「フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライッッッッ!!!!」
「ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
頭が割れそうになるほどに痛む。耳を塞ぎたくても両手を拘束されており、どうすることも出来ない。
その時だった。
ピイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!
ポーが持っている杖に付いている青白い水晶が不意に光を放ち、それは沢村のコンバットスーツを直撃した。
「うがああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
体が焼かれるような激痛が沢村を襲う。コンバットスーツの計器が狂い始め、更なる激痛を与えて来る。
「止めろッ!!止めろッ!!止めろオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「シャイダー。あなたのコンバットスーツを無力化します!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライッッッッ!!!!」
シュウウウウウウウウッッッッッッッッ!!!!!!!!
破壊されたコンバットスーツのあちこちから煙が立ち込める。と同時に、スーツがチカチカと点滅を始め、計器が停止し始める。
「フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライ!!フーマダライ、フーマビャクライッッッッ!!!!」
「…あ…あ…あ…あ…!!」
それまで沢村の体を大ダメージから守っていたコンバットスーツが少しずつ軽くなって行く。
「あなたが身に纏っているコンバットスーツは最早、役に立たない襤褸切れ同然のものとなったのですッ!!」
ポーは満足げに笑みを浮かべ、
「さぁ、お前達。シャイダーを好きになさい」
と言った。
「…な…、…に…?」
朦朧とする意識の中で辛うじて声を上げる。すると、今度はブンがボーイと同じように沢村の足の付け根部分とコンバットスーツの間に出来た隙間から右手を忍ばせると、沢村の2本の足の付け根部分のふくよかな膨らみを握った。その途端、
「んあッ!?」
と、沢村が再び短い声を上げ、体をビクリと跳ねらせた。
「ここに、シャイダーのエネルギータンクがあるんだよな!?」
ブンは心なしか顔を赤らめ、沢村の男としての象徴・ペニスをクニュクニュと揉み込む。
「ここから溢れ出るエネルギーを、一滴残らず搾り取ってやるよ!!」
「…な…ッ、…何を…、…言って…!?」
ガチャッ!!ガチャガチャッッッッ!!!!
どんなに体を動かしても、両手両足を拘束している鎖は切れることがなく、ただ、無機質な冷たい金属音を立て続けるのだった。