殿御乱心! 第6話
「…ちぃあぁきぃぃぃッッッ!!!!」
「火」の文字をあしらったマスク。その文字の1画目と2画目の部分がまさに吊り上って見えた。
「…許さんッ…!!」
シンケンレッドに一筆奏上した丈瑠。体全体で呼吸をするように大きく体を揺り動かし、シンケンマルを構えている。
「…ヤベェ…!!」
「木」の文字をあしらったマスク。その文字の1画目の横棒の奥に隠された瞳が引き攣った笑いを浮かべる。シンケングリーンに一筆奏上した千明。その額から冷や汗が流れる。丈瑠と同じようにシンケンマルを構えているものの、その手は小さく震えていた。
「行くぞッ、千明ぃッ!!」
丈瑠がそう叫んだ時だった。
「…あれはッ!?」
丈瑠の後ろにいたシンケンゴールドに一貫献上した源太が思わず叫んだ。「光」の文字をあしらったマスク。その4画目の部分の奥で、源太が目をカッと見開いた。丈瑠のシンケンマルが輝き始めたのだ。
「ちょッ、たッ、丈瑠ぅッ!?」
千明が慌てて声を上げる。
「こッ、こんな小さな中庭でそれを放つのかよッ!?」
「うるさいッ!!」
いつもの丈瑠ではなかった。千明の挑発が、丈瑠のプライドをズタズタに引き裂いたのだ。そんなプライドを引き裂かれ、丈瑠が黙っているはずがなかった。
「食らえッ!!」
丈瑠がシンケンマルを振り翳す。
「シンケンマルッ、火炎の…」
「千明ッ、悪りィッ!!」
不意に背後で源太が叫んだ。そして、
「おおっと、手が滑ったぁッ!!」
と言い、右手を伸ばした。そして、大きく股を開いて立っている丈瑠のそこへ入れたかと思うと、その付け根を握ったのだ。
「…え?」
「んあああッッッ!!!!」
千明の声と、丈瑠の叫び声が同時に上がった。
「うぅわッ!タケちゃんのここ、すんげぇ、コリッコリなのな!!」
源太はそう言いながら、丈瑠の股間に垂れ下がる2つの球体を何度か握った。
「ああッ!!ああッ!!ああッ!!」
シンケンレッドのマスクがビクンビクンと動き、体から力が抜けて行くのが分かった。
「ああああ〜〜〜〜ッッッッ!!!!!!!!」
千明が叫ぶ。
「ちょっとッ、源ちゃあああんッッッ!!!!丈瑠のそこを最初に握るのは、オレだっただろうッ!?」
その時、源太が丈瑠の背後から顔をひょっこり出し、
「しょうがねぇだろうッ!?今の場合は緊急だったんだからよッ!!」
と言った。
「もぉ〜!!後からお仕置きだからなぁッ!!」
「おうッ!!煮るなり焼くなり、好きにしてくれやッ!!」
千明と源太のやり取りが続いたその時だった。
「…うぅ…!!」
丈瑠が呻き声を上げたかと思うと、ガクリと体を傾かせ、地面に膝を着いた。光を放っていたシンケンマルはその色を失い、ガランと冷たい音を立てて地面に転がった。
「…タケちゃん…?」
源太が心配そうに覗き込む。
「…」
丈瑠のはぁはぁと言う荒い息遣いがマスク越しに聞こえて来る。だが、それ以外、丈瑠は何も反撃して来ない。
「どうしたんだよぉ、タケちゃあん?」
「…げ…んた…?」
どのくらい時間が経ったのか分からなかったが、ポツリと呟くように丈瑠が声を上げ、源太を見つめた。
「…握り方が悪かったか?」
さすがにちょっと心配になった。あの、男性しか味わえない独特の痛みを丈瑠は味わっているのだろうか。
「…何だ、…今の…?」
「へッ!?」
いつの間にか横にやって来ていた千明が素っ頓狂な声を上げた。
「…千明…?」
「火」の文字をあしらったマスクの奥の、丈瑠の視線が垣間見える。自分への怒りをすっかり忘れたのか、今は呆然とした表情をしている。
「…丈瑠ぅ…?…もしかして、感じちまったのかぁ…?」
その時だった。
不意に源太が丈瑠の両脇に腕を入れた。そして、
「よっと!!」
と言い、丈瑠をグイッと持ち上げたのだ。
「…あ…」
その動きに釣られるかのように、丈瑠の体が立ち上がる。千明の目の前に、無防備な丈瑠の体が晒される。
がっしりとした四肢。筋肉隆々の二の腕と太ももが、シンケンレッドの光沢のある赤と黒の生地にくっきりと浮かび上がる。そして、腹筋はうっすらと割れ目を強調し、魅力を感じさせる。
そして、丈瑠の股間は、まだ静けさを保っていた。
(…何か、…ムカつく…!!)
千明の心の中に、おぞましい感情がふつふつと湧いて来る。
誰もが慕うこの殿様を、徹底的に辱めたい!普段は殿様気取りでも、自分の前では羞恥な姿を晒す、そんな存在に貶めたい!
そんな欲望が、千明の右手を動かした。
「んああああッッッッ!!!!」
丈瑠の悲鳴を聞いたような気がした。
「ああッ!!ああッ!!ああああッッッッ!!!!」
目の前にいる丈瑠の体が弓なりに硬直している。そして、ビクンビクンと体を跳ねらせている。
(…あれ?)
自分の手が、何か柔らかいものを触っている。
「…あ…!」
気が付いた時、千明の手は源太に羽交い絞めにされている丈瑠の、男性としての象徴を無言で撫で続けていたのだ。
「…うわぁ…!」
丈瑠の背後にいる源太が声を上げる。
「千明ぃ。…触り方がすっげぇ、いやらしい…!!」
千明の細い指が、手のひらが、黒いスーツの中に息づく丈瑠のそれを静かに撫でたり、触れるか触れないかの絶妙な間合いで刺激していたのである。
「はあッ!!ああッ!!ああッ!!」
丈瑠が声を上げ続ける。
「…タケちゃんの喘ぎ声…、…すっげぇ、…エロい…!!」
源太の股間が、光沢のある濃紺のスーツの中でくっきりとその存在感を現し始める。
「…こんなところを、他のやつらに見られたらヤバいよな…!」
千明が言った言葉にはっとしたのか、丈瑠がはたと声を上げるのを止めた。
「…続きは、オレの部屋でやろうぜ!!」
そう言う千明の股間も、黒いスーツの中でくっきりとその存在感を現していた。