殿御乱心! 第11話
「…オレの目の前で、オナニーしてみせろよ!」
シンケングリーン・千明の計画は全て狂っていた。
本当は自分の当主であるシンケンレッド・丈瑠の弱みを握り、日頃の鍛錬の恨みを晴らすべく、ちょっとからかってやろう、そう思っていただけのことだった。だが、目の前にいる丈瑠はあまりに堂々としていて、千明の予想する答えと正反対の答えばかりを言って来たのだ。
オナニーをしたことがない、女の子との免疫はないから苦手だ、そう言わせて恥ずかしそうにする丈瑠を期待していた。なのに、丈瑠の口から飛び出す言葉はそんなことを微塵も感じさせないものだった。
イライラと怒りが募り、気が付いた時には、千明の口からそんな言葉が飛び出していた。
「…」
その言葉に、その言葉を投げ掛けられた丈瑠は一瞬、固まった。そして、
「ちょちょちょちょッ!!!!ちょっとッ、千明ぃッ!!」
と暑苦しい声が2人の耳を劈いた。次の瞬間、シンケンゴールド・梅盛源太が千明に掴み掛かった。
「…おッ、…おッ、…おまッ!!」
目をカッと見開き、口をパクパクさせる源太。それとは正反対に、千明はムスッとした表情を変えようとはしなかった。
「おまッ!!…い、…いくら何でも、そこまではやり過ぎだろうよッ!?」
とその時だった。
「…いいだろう…」
意外なところから返事が返って来た。
「「…え?」」
千明と源太が一斉にその声のした方を振り向く。
「…約束…だからな…!」
2人をじっと見つめる丈瑠がその場にいた。
「…丈…ちゃん…?」
源太が信じられないと言う表情をして丈瑠を見つめる。丈瑠はじっと2人を見つめ、微動だにしない。心なしか、顔が少し赤らんでいるのが分かった。
「…俺が、…お前らの前で、…オナニー、…すればいいんだな?」
「丈ちゃんッ!!」
次の瞬間、源太は今度は丈瑠に掴み掛かっていた。
「丈ちゃんがそこまでするこたァねぇよッ!!」
そう言うと、
「千明ぃッ!!もう止めようぜッ、こんなことッ!!」
と言った。だが、千明は、
「…嫌だねッ!!」
と言い、丈瑠を睨み付けた。
「…最初は、単なる腹いせのつもりだった。…日頃から丈瑠に散々痛め付けられてるからな、その仕返しにと思ってこの作戦を立てたんだ。…女の子との経験もない、オナニーをしたこともない丈瑠をとことん辱めるつもりだった。…でもッ、聞いてみたら、全く正反対なことばかり言いやがってッ!!」
次の瞬間、千明は丈瑠に掴み掛かっていた。
「気に食わねぇんだよッ!!何もかもッ!!アンタはッ、いっつもオレの前にいるッ!!殿様だか何だか知らねぇけどッ、1つくらい、オレが前にいたっていいことだってあるだろうがよッ!!」
その時だった。丈瑠がフッと笑みを零したのだ。
「…やはりな…」
「…え?」
千明が呆然と丈瑠を見つめる。
「…だいたい、そんなことだろうと思っていた。俺の弱みを握り、日頃の鍛錬の腹いせとばかりに俺をからかったつもりだろうが…」
その時、丈瑠が掴み掛かっている千明の腕をグッと掴んだ。
「…俺だって、殿様である前に1人の男だ。…やるべきことは、…ちゃんと、…やってるさ!」
「…丈…瑠…」
「…丈ちゃん…、…まさか、…最初から、…全て分かって…?」
源太がそう言うと、
「…当たり前だ。…千明の考えることくらい、…何でも分かるさ…!」
と言った。だが、
「とは言え」
と言い、じっと千明を見つめた。
「…丈瑠…?」
呆然としているのは千明の方だった。計画が全て狂っただけではなく、自分の心の内も全て丈瑠に知られていたとは。
(…オレは、…やっぱりコイツには敵わない…!)
そう思い始めていた自分がいたのも事実だ。
「約束は約束だからな」
そう言った丈瑠がショドウフォンを取り出した。そして、
「一筆奏上ッ!」
と叫んだかと思うと、次の瞬間、丈瑠の体が光り、光沢のある鮮やかな赤色と黒色のスーツに身を包んでいたのである。
「たッ、丈ちゃんッ!?」
源太が驚いて声を上げる。
「…!?」
千明も言葉を失っていた。
シンケンレッドに一筆奏上した丈瑠は、「火」の文字をあしらったマスクを装着していなかった。そして、彼の股間はやや膨らんでおり、黒いスーツの中で少しずつ形を現し始めていたのである。
「俺も、お前達から教えてもらわなければならないことがあることがあるとすれば、それはこれもそうだろうな」
そう言った丈瑠はゆっくりと自身の股間へ右手を持って行き、静かに揉み込み始めた。
「たたた、丈ちゃんッ!?」
源太が顔を赤くする。
「…ん…ッ…!!…く…ッ!!」
目を閉じ、時折、体をピクピクと反応させながら、自身の股間を揉みしだく丈瑠。
「…丈ちゃん…、…何て、…エロい顔してんだよ…ッ!!」
息を荒くし始めた源太の体が突然光り、次の瞬間、源太はシンケンゴールドに一貫献上していた。「光」の文字をあしらったマスクは装着せず、光沢のある鮮やかな金色と紺色のスーツ姿だった。その紺色部分の、源太の象徴とも言えるべき股間は大きく盛り上がり、先端部分は光沢を失っていた。
「…ガマン、…出来ねぇッ!!」
そう言ったかと思うと、源太は丈瑠をしっかりと抱き締めた。そして、お互いの唇を合わせたのである。
…クチュッ!!…チュッ!!
淫猥なくすぐったい音が部屋に響く。
「…んッ!!…んん…ッ…!!」
丈瑠の低い呻き声と、
「…あッ!!…はぁ…ッ…!!」
と言う源太のやや甲高い吐息が入り混じる。
「…ふぅ…!!」
その光景を見ていた千明がフッと苦笑する。
「…敵わねぇなぁ、…本当に…!!」
そう言うと、千明もシンケングリーンに一筆奏上していた。「木」の文字をあしらったマスクは装着せず、光沢のある鮮やかな緑色と黒色のスーツ姿だった。