女王の妖魔術 第9話
「ンハハハハハハハハ…!!」
目をギラギラと輝かせ、凍り付くほどに冷たい眼差しをしているヘドリアン。その右手がスゥッと上がったかと思うと、
「かかれいッ!!」
とその皺枯れた声で叫んだ。その途端、鮫島と豹を取り囲んでいたマシンマンが一斉に飛び掛かった。
「はあッ!!」
「とおッ!!」
「うおおおおッッッッ!!!!」
「はああああッッッッ!!!!」
バルシャークに変身している鮫島と、バルパンサーに変身している豹が細かく動く。そして、マシンマンを振り回しながら次々と薙ぎ倒して行く。
「ンンッフフフフフフフフ…!!」
その光景を見ながら、ヘドリアンは低い笑い声を上げている。その間にも、
「シャークッ、ジョーッズッッッッ!!!!」
と、鮫島がサメの大きな口を象ったかのように両腕を大きく広げ、マシンマンの頭部を徹底的に食らい尽くせば、
「ローリングッ、パンサアアアアッッッッ!!!!」
と、豹は体を折り曲げ、クルクルと宙を舞い、マシンマンに体当たりしていた。
「モォンガアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
民族のお面のようなけばけばしい色の顔を持つ機械生命体・マジンモンガーが叫び声を上げ、さす股のような武器を振り上げて2人に突進して行く。
ドゴオオオオッッッッ!!!!
「ぐふッ!!」
その武器が鮫島の腹部に減り込み、鮫島は体を一瞬、折り曲げる。
「モォンガアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「うわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
マジンモンガーのその武器が鮫島の体を持ち上げ、ぶぅんと言う音と共に、その体を放り投げた。
「…お…のれええええッッッッ!!!!」
鮫島は瞬時に体勢を整えると、
「とおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言う叫び声と共に、その長い右足を突き出し、マジンモンガーを蹴り上げた。
「ぬおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!」
マジンモンガーが背後へ引っ繰り返る。
「今だッ、パンサーッ!!」
鮫島は豹にそう声をかけて、
「…パン…、…サー…?」
と、その場で呆然と立ち尽くした。
「…」
豹が片隅で立ち尽くしているのだ。
「おいッ、パンサーッ!!何やってんだよッ!?」
襲い来るマシンマン達を薙ぎ払いながら声をかける。だが、豹は一向に動こうとしない。
(…おかしい…)
その時、鮫島はある異変に気付いていた。
迫り来るマシンマン達は、鮫島へは向かって来るものの、豹へは向かって行かない。それだけではない。戦況を見つめているヘドリアンやゼロガールズでさえ、ただただニヤニヤと鮫島を見つめているだけなのだ。
「グフフフフ…!!」
その時、マジンモンガーが低い声で笑った。そして、ヘドリアンが冷たい笑みを浮かべたかと思うと、
「…やれ…!!」
と一言だけ言った。
「…ぬうううう…ッッッッ!!!!」
低い呻き声が聞こえた時、
「うぐッ!?」
と言う呻き声と共に、鮫島の体が硬直した。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
指一本さえ動かすことが出来ない。
「…な…ッ、…何だ…ッ!?」
「アァッハハハハハハハハ…!!」
ヘドリアンの勝ち誇った笑い声が洞窟内に響く。
「罠にかかりおったなッ、バルシャークッ!!ここからは地獄の苦しみ。たぁっぷりと味わうがよいッ!!やれええええいッ、マジンモンガアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ヘドリアンがその皺枯れた声で甲高く叫ぶ。すると、マジンモンガーは、
「キイエエエエエエエエエエエエエエエエッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と奇声を上げ、さすまた状の武器を思い切り振り上げた。すると、それまで硬直していた鮫島の体が物凄い勢いで動いたかと思うと、くるんと宙返りをし、
ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う音と共に、地面に背中をしたたかに打ち付けた。
「それそれそれええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
マジンモンガーが武器を何度も何度も振る。そのたびに鮫島は体を宙で翻し、
ドガッ!!
ドゴッ!!
バシイイイイッッッッ!!!!
と言う音を立てて地面に体を打ち付ける。そのたびに鮫島は、
「うわああああッッッッ!!!!」
「ああああッッッッ!!!!」
「ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言う悲鳴を上げた。
「アァッハハハハハハハハ…!!」
それを見てヘドリアンが高らかに笑う。
「…パ…、…ンサ…アアアア…ッッッッ!!!!」
目の前では信じられない光景が広がっていた。
「…」
豹はやはり動かない。マシンマン達も豹には飛び掛かって行っていないのだ。
(…ま…、…さ…か…!?)
ここまで来てようやく嫌な予感がして来た。
「…パン…サー…ッ!!…パンサアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!」
鮫島が悲鳴混じりの声を上げる。だが、豹は微動だにしない。それどころか、豹の2本の足の付け根部分に息づくふくよかな膨らみが大きく膨らんでいるように見えたのだ。
その時だった。
「人の心配をしている余裕なんてないぞおッ、バルシャークウウウウッッッッ!!!!」
「うわッ!?ああッ!?ああッ!!ああッ!!」
いつの間にか、鮫島の体が宙に浮いたかと思うとどんどん仰け反って行く。
「…いッ、…痛てええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!痛てええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
マジンモンガーの念力によってギリギリと体が締め付けられるような感覚がして、鮫島は悲鳴を上げる。
「食らえええええいいいいッッッッ!!!!」
マジンモンガーの目がカッと光った次の瞬間、
ビキビキビキビキビキビキビキビキ…ッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う衝撃音と、
「ぐぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と言う鮫島の絶叫が洞窟内に響き渡った。
「ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
大きく仰け反っている鮫島の体の表面に、青白く眩く光る光の膜のようなものが見える。
「アァッハハハハハハハハ…!!」
ヘドリアンの勝ち誇った笑い声が、激痛を伴う意識の中で聞こえて来る。
「どうじゃ、バルシャークッ!!マジンモンガーの念力と共に放たれる超高圧電流は!!苦しめッ!!もっと苦しめッ!!アハハハハハハハハ…!!」
「ひがああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
体を仰け反らせ、その場でもぞもぞと蠢く鮫島。その体を超高圧電流の真っ白な膜が覆っていた。