女王の妖魔術V 第2話
その時、街はパニックに陥っていた。
「モンガアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!」
巨大な顔を持つ機械生命体・ペッタンモンガーが暴れ回っている。その周りには、見た目は人間なのに顔には醜いマスクを付けた者がまるでゾンビのようにうようよと這い回り、中には凶暴化して乱暴をはたらく者までいたのだ。
「そぉれそれそれええええッッッッ!!!!ペッタンモンガー様のスタンプ攻撃を受けてみろオオオオッッッッ!!!!そしてッ、お前達の心の中のおぞましい感情を引き立たせてやるぞオオオオッッッッ!!!!」
そう言いながら、左手に付いている掃除機のノズルのようなものを投げ飛ばし、逃げ惑う人々を捕まえる。そして、
「そぉれええええッッッッ!!!!ペッタンコオオオオッッッッ!!!!」
と、胸のスタンプ台にその者の顔を押し付けた。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
突然、顔を押さえて奇声を発するその人間。その途端、
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、手当たり次第に周りのものを破壊し始めたのだ。
「…フン…ッ!!」
その光景を、アマゾンキラーは満足気に見つめている。
「…愚かなる人間ども…!!…ペッタンモンガーのマスクを貼り付けられ、その心の中に宿るおぞましい感情を引き出されられ、暴れ狂うがいいッ!!…そして、…お前達の信頼関係を崩し、人間社会を破滅とさせてやる…ッ!!」
「そぉらああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!次は誰だああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と、その時だった。
「「はああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」」
突然、ペッタンモンガーの両側から青と黄色の生地に包まれた長くガッシリとした足が伸びて来たかと思うと、ペッタンモンガーを蹴り飛ばしたのだ。
「ふぎゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
これにはペッタンモンガーは素っ頓狂な声を上げて引っ繰り返り、
「…ッッッッ!!!?」
と、アマゾンキラーは驚いて見る。
「「はああああッッッッ!!!!」」
光沢のある鮮やかな青色のスーツ。胸の部分には白いVラインが施され、マスクには鮫の顔があしらわれている。そして、もう1人は光沢のある鮮やかな黄色のスーツ。胸の部分には同じように白いVラインが施され、マスクには豹の顔があしらわれている。
「現れたなぁッ、サンバルカンッ!!」
「ブラックマグマッ!!今度は何を企んでやがるッ!?」
青いスーツを着た男、バルシャーク・鮫島欣也が、鮫が大きく口を開けているかのように、両腕を大きく上下に広げる。そして、
「人々を元に戻せええええッッッッ!!!!」
と、今度は黄色のスーツを着た男、バルパンサー・豹朝夫が、豹が今にも飛び掛かろうとしているようなポーズを取った。
「…フンッ!!」
アマゾンキラーがフンと鼻で笑うと、
「ペッタンモンガーッ!!この2人も凶暴化マスクの餌食にしてしまえッ!!」
と言った。すると、
「モォンガアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と、ペッタンモンガーが2人に襲い掛かった。だが、2人は俊敏な動きでペッタンモンガーを翻弄して行く。
「はああああッッッッ!!!!」
「おおおおうッッッッ!!!!」
「おおおおッッッッ!!!?」
2人の俊敏な動きに振り回され、フラフラと体をよろめかせるペッタンモンガー。と、次の瞬間、バルシャークがぺたんと体を地面にうつ伏せに付けたかと思うと、
「はああああッッッッ!!!!」
と、ペッタンモンガーの両足を払いのけた。
「うおッ!?」
その攻撃に、ペッタンモンガーは足を払われ、ドスンと尻もちをつく。と、そこへ、
「ローリングッ、パンサアアアアッッッッ!!!!」
と、バルパンサーが体を高速で回転させながらまるでボールのようにペッタンモンガーに突進し、弾き飛ばした。
「ぐぎゃああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
その勢いある体当たり攻撃にペッタンモンガーはゴロゴロと後転を繰り返す。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
ペッタンモンガーの真っ赤な大きな瞳がグルグルと渦を巻いている。
「…め…ッ、…目が…ッ、…回る…ッ!!…目があッ!!…目が回るううううううううッッッッッッッッ!!!!!!!!こりゃ、たまらんんんんんんんんんッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「どッ、どうしたのだッ、ペッタンモンガーッ!?」
アマゾンキラーが目を大きく見開いて駆け寄って来る。
「しっかりするのですッ!!さっさと立ち上がって、サンバルカンを倒しなさいッ!!」
「…あ…あ…あ…あ…!!」
だが、立ち上がったペッタンモンガーはふらふらと足取りおぼつかず、あっちへフラフラ、こっちへフラフラと歩き回る。その様子に、
「…な、…何だ、あいつ…?」
とバルシャークが言えば、
「これはもしかして、オレ達だけで余裕ってやつですかにぃッ!?」
とバルパンサーが親指で鼻を弾くようにする。
「こらッ、パンサーッ!!その余裕が怖いんだぞッ!?」
「ヘヘッ!!分かってますよッ!!」
その時だった。
『何をしておるのじゃッ、アマゾンキラーッ!!』
雷が落ちるとはこう言うことを言うのだろうと妙に納得出来るほど、どこからともなくヘドリアン女王の皺枯れた怒鳴り声が聞こえて来た。その声にアマゾンキラーはギクリと表情を強張らせ、
「…じょッ、…女王様…ッ!!」
と、辺りを見回し始めた。
『全くッ!!バルシャークとバルパンサーごとき、さっさと倒さぬかッ!!何をのこのことやっておるのじゃッ!?忌々しいヘルサターンが嘲笑っておるわッ!!』
だから機嫌が悪いのか、と妙に納得する。
「…もッ、申し訳ございませんッ、女王様ッ!!」
アマゾンキラーは慌ててそう言うと、
「ペッ、ペッタンモンガーッ!!さっさとバルシャークとバルパンサーを倒せッ!!」
と言った。
「…おッ、…おのれええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
怒り狂ったペッタンモンガーの大きな真っ赤な瞳が更に真っ赤に光った。
「このペッタンモンガー様を怒らせたこと、後悔させてやるぞおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「へんッ!!お前が怒ったって、怖くも何ともないさ!!」
バルシャークがそう言うと、
「そうだそうだッ!!お前なんか、オレのローリングパンサーで一撃だッ!!」
とバルパンサーまでもが言う。だが、ペッタンモンガーは、
「…ククク…!!」
と笑うと、
「…ぬぅぅぅぅううううううううううううううううッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、邪悪なオーラを辺りに振り撒き始めた。その途端、
「グゥウオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と言う地の底から響くような叫び声を上げながら、ペッタンモンガーのマスクを貼り付けられた人々が一斉に2人に襲い掛かって来たのだった。