女王の妖魔術V 第3話
「グゥウオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
地の底から響くような叫び声を上げながら、ペッタンモンガーのマスクを貼り付けられた人々が一斉にバルシャーク・鮫島欣也とバルパンサー・豹朝夫に襲い掛かって来る。
「うわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
次々に人々の腕が伸びて来て、豹の腕や体、足に組み付いて来る。
「…や…ッ、…止めろオオオオッッッッ!!!!…はッ、…離せええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
バルパンサーに変身しているため、力は人間態の時よりも遥かに出る。ポイポイッ、と言う形容が似合うほどに、豹は次々に人々を弾き飛ばして行く。
「こんのおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!」
そして、右手を思い切り振り上げたその時だった。
「止めろッ、パンサーッ!!」
同じようにペッタンモンガーのマスクを貼り付けられた人々に組み付かれている鮫島が叫び声を上げた。
「こいつらは普通の人間だッ!!そんな人達を殴ったら、あっと言う間に死んでしまうぞッ!?」
「…ッッッッ!!!!」
その言葉にはっとなり、豹は振り上げた拳をブルブルと握り締めた。
「…フフフ…!!」
アマゾンキラーが目をギラギラと輝かせ、低く笑った。
「バルシャークの言う通りよ、バルパンサー。そいつらはペッタンモンガーのマスクを貼り付けられたただの人間。ダークQでもマシンマンでもない。それがどう言うことか、お分かり?」
「…く…ッ!!」
「そうよ。振り払うことは出来ても、殴ったりしてご覧なさい。あっと言う間にその人間は死ぬ。そして、あなた方太陽戦隊は、人々を殺す殺戮部隊だと批判の矢面に立たされるでしょうね…!!」
「…ひッ、卑怯だぞッ、ブラックマグマああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
豹がとうとう怒鳴る。だがアマゾンキラーは、
「…フンッ!!」
と鼻で笑うと、
「ペッタンモンガーッ!!バルパンサーを痛め付けなさいッ!!ただ、痛め付けるだけですよッ!!」
と言った。
「モォンガアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!」
すると、ペッタンモンガーは左手に付けられているロープのようなものを豹の体に何度も何度も叩きつけ始めた。
バシッ!!バシイイイイッッッッ!!!!
激しい衝撃音と共に、
「うわッ!!」
「ああああッッッッ!!!!」
と、豹が悲鳴を上げ、体を弾き飛ばされる。
「そぉれそれそれええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
バシッ!!バシイイイイッッッッ!!!!
「ぐぎゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「そぉら、もう一発だああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ペッタンモンガーは、今度は右手に持っている印鑑のようなものが付いた杖を、フラフラとしている豹の腹部に思い切り減り込ませた。
ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!
鈍い音と共に、
「…ぐふ…ッ!?」
と呻き声を上げて、豹が体をくの字に折り曲げる。
「…お…、…おご…ッ!?」
バルパンサーのマスクの中で、豹のクリクリッとした目が大きく見開かれている。
「ギャハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ドゴッ!!ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!
ペッタンモンガーは杖を何度も何度も振り回し、フラフラになっている豹へ叩き付ける。そして、地面に仰向けに倒れ込んだ豹の腹部にも何度も何度も叩き付け始めたのだ。
ドゴッ!!ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!
「ぐがああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
体をV字に折り曲げ、悲鳴を上げる豹。
「…パ…ッ、…パンサアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!」
鮫島はペッタンモンガーのマスクを貼り付けられた人間を一手に引き受けていた。その多勢に無勢は、鮫島が豹を助けに行くのを妨げていたのだ。
その時だった。
「今ですッ、女王様ッ!!」
不意にアマゾンキラーが空を見上げ、大声を上げた。
「任せておけッ!!」
北極の氷の下。機械帝国ブラックマグマの広間ではヘドリアン女王が水晶を目の前にスタンバイをしていた。
「私の妖魔術で、ペッタンモンガーの顔を貼り付けられた者達を更に凶暴化してやるわッ!!」
そう言うと、ヘドリアン女王は大きく深呼吸をし、静かに目を閉じた。そして、
「…ああああああああ…」
と、両手を静かに、まるで水晶に翳すかのように回し始めた。
「…ペッタンモンガーのマスクを貼り付けられた者達よ…」
その声が聞こえ始めたと同時に、ペッタンモンガーのマスクが真っ黒なオーラで包まれ始めた。
「…さぁ…。…己の心の中を曝け出すがいい。…嫉妬…、…羨望…、…怒り…。…全ての醜い感情を引きずり出し、そこにいるサンバルカンどもにその感情をぶつけるのじゃ…!!」
「グゥオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
すると、鮫島と豹を襲っていた者達が、2人に殴る蹴るなどの暴行を加え始めた。中には鉄パイプや角材を持ち出し、それで殴り掛かる者も現れた。
ドゴオオオオッッッッ!!!!ドゴオオオオッッッッ!!!!
鈍い音が聞こえ、
「ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と鮫島が悲鳴を上げれば、
「ひぎゃああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と豹が地面を転げ回る。
「…やッ、…止めろオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
鮫島が叫んだその時だった。
パシイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!
突然、鮫島の後頭部に衝撃が走った。
「…あ…」
視界がぐらりと歪む。
(…え?)
視線がどんどん地面に向かって落ちて行く。そして、ドサッと言う音を立てて、鮫島は地面に突っ伏していた。
「…シャッ、…シャアクウウウウウウウウウウウウウウウウッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
豹が叫ぶ。
その時だった。
「…俺は…、…強い…!!」
聞き慣れた声が頭上から聞こえて来た。
「…お前さえ、いなければ…。…俺が…、…サンバルカン…だった…」
(…え?)
ゆっくりと振り返る。
そこには剣道着を着た、ペッタンモンガーのマスクをかぶった男が立っていた。
「…お前さえ…、…お前さえいなければ、俺が飛羽さんの隣りにいたのに…!!」
右手に持った竹刀がギリギリと音を立てている。
「…大…、…介…?」
そこには、青柳大介が立っていた。