僕だけのヒーロー 第4話
「…う…、…んん…」
どのくらい時間が経っていたでしょうか。竜也さんにとっては一瞬だったかもしれません。だって、僕が調合した薬で深い眠りに就いていたのですから。
でも、僕にとってはとても長い時間のように感じられました。眠って体がとても重くなっている竜也さんを壁に押し付け、両手両足を拘束し、磔のようにする。それだけでもかなりの重労働でした。
でも、その時、僕は竜也さんの温もりや、竜也さんの匂いを感じることが出来たのですが。
「おはようございます、竜也さん」
僕はニッコリと微笑みました。すると竜也さんも、
「…おはよ…」
と言って、すぐに、
「…え?」
と言うと、慌てて周りを見回しました。
「…なッ、…何だよッ、これ…ッ!?」
驚いたと同時に、両手両足をバタバタと動かします。でも、竜也さんの両手首と両足首を拘束している金具はガチャガチャと言う乾いた金属音を立てるだけでビクともしません。
「…フフッ!!」
その姿が滑稽で、僕は思わず笑っていました。
「…シッ、…シオンッ!?…な、…何だよッ、…これ…ッ!?」
「さぁ?何でしょう?」
「と言うか…。…なッ、何で…ッ、…オレは…ッ、…クロノチェンジしてんだよ…ッ!?」
光沢のある鮮やかな赤色のスーツ。タイムレッドにクロノチェンジしている竜也さん。今、僕の目の前で大の字に拘束されている竜也さんは、僕が開発した薬の影響でタイムレッドに無意識にクロノチェンジしていたのです。
その時でした。
「…ッッッッ!!!?…うぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
突然、竜也さんが目を大きく見開き、声を上ずらせて叫びました。いえ、叫んだだけではなく、顔を真っ赤にもしていました。
「…オッ、…オレ…ッ!!…何で勃起してんだよッ!?」
竜也さんのペニス。タイムレッドの光沢のある鮮やかな赤色のスーツの中で臍へ向かって大きく勃起しています。
「…竜也さん…。…いい光景ですね…」
僕は顔を赤らめ、ほうと溜め息を吐きます。
「…竜也さんのペニス、大きいんですね。…太いし、…長いし…。…それに、先端部分なんてきれいな形をしていますよね…」
「…みッ、見ないでッ!!」
竜也さんがそう言ったのも束の間、
「って言うか、シオンッ!!お前ッ、どう言うつもりだよッ!?」
と怒鳴ると、僕を睨み付けて来ました。
「…フッ!!」
思わず、苦笑してしまいました。
「…竜也さぁん…。…やっと気付いたんですかぁ…?」
「…って言うか、…シ…、…オン…?」
竜也さんの視線が僕の一部分を一転凝視しています。
「…あはッ!!」
僕は笑いました。
僕の2本の足の付け根部分。さっきから僕のペニスは痛いくらいに勃起し、チノパンの前の部分を大きく押し上げていたんです。そして、その先端がうっすらと滲んでいました。
「竜也さんのエッチな姿を見ていたら、僕まで勃起してしまいました!!」
今、僕の心臓はドキドキと早鐘を打っています。
「…シ…オン…?…まさ…か…?」
「バレちゃいましたか?」
僕はニッコリと微笑むと、
「…僕…。…実は、竜也さんに出逢った時から、竜也さんのことが好きだったんです」
と言いました。そして、ズボンのポケットからカメラを取り出し、今の竜也さんの無様な姿を写真に収めました。
カシャッ!!カシャッ!!
小気味良いシャッター音が部屋の中に響きます。
「…やッ、…止めろよッ!!」
竜也さんが慌てて言います。でも、顔を覆ったり、抵抗したりすることは一切出来ません。竜也さんの無様な姿は、そのまま僕のカメラの中に納まりました。
「…フフッ!!」
「…シッ、…シオンッ!!…お前…ッ!!」
竜也さんが両手首と両足首に取り付けられた拘束具から逃れようと必死に手足を動かします。
ガチャガチャガチャガチャッッッッ!!!!ガチャガチャガチャガチャッッッッ!!!!
でも、竜也さんがどんなに手足を動かしても、その拘束具はビクともしませんでした。
「無駄ですよ、竜也さん。それは絶対に外れないですから」
僕はそう言いながら竜也さんに近付き、竜也さんの体に顔を埋めました。
「…え?」
竜也さんは驚いて僕を見下ろしています。
「…竜也さん…。…いい匂いがする…。…男らしい、…いい匂い…」
「どッ、退けよッ、シオンッ!!…オッ、…オレにはッ、そんな趣味はないよッ!!」
普段よりもちょっとだけ大声で、怒気を含んだ竜也さんの声が頭上から降り注ぎます。
「竜也さんにはそんな趣味がなくても、僕にはあるんですよ。だって、竜也さんは僕だけのヒーローなんですから」
「…シ…オン…?」
竜也さんが呆然と僕を見つめています。
「…竜也…さん…」
僕が切ない表情をしていたからでしょう。竜也さんの体の強張りが、ふっと弱まったような気がしました。
「…竜也さん…。…僕だけのヒーロー、僕だけのタイムレッドになって下さい…」
僕はそう言うと竜也さんと顔を近付け、自分の唇を竜也さんの唇に押し当てました。
「…ッッッッ!!!?」
その途端、竜也さんの目がカッと見開き、体から完全に力が抜けていました。
(…竜也…、…さん…)
竜也さんの唇の感触。とても柔らかくて、とても温かいです。今までに何人もの女の子としたであろう唇を僕が奪っています。暫くして僕は唇を離しました。
「…シ…、…オン…?」
竜也さんがぼんやりと僕を見つめています。今では、さっきまでの怒っている表情は消えていました。
「…ヘヘ…ッ!!」
僕は笑うと、
「…僕のファーストキス…。…大好きな竜也さんとしちゃいました」
と言いました。すると竜也さんは、
「…え?」
と声を上げました。
「…ねぇ、竜也さん…」
「…な、…何だよ…!?」
僕はウットリとした表情で竜也さんを見つめます。
「…もう1回…、…キス…、…いいですよね?」
「やッ、止めろッ、シオンッ!!…ん…ッ、…んんんん…ッッッッ!!!!」
竜也さんの言葉は僕の唇に塞がれました。
…チュッ!!…チュッ!!
僕は竜也さんの唇を啄ばむようにしてキスをします。そのあまりの気持ち良さに、僕は目を閉じていました。
(…竜也…、…さん…)
その時、僕は舌をそっと出してみました。その途端、僕の舌は支えを失ったかのようにスルッと動いたのです。
…クチュッ!!…クチュクチュ…ッッッッ!!!!
僕が驚いて目を開けると、僕の舌はなんと、竜也さんの口の中に入っていたのです。そんなことをされては僕の暴走も止まらなくなります。そのまま僕の舌は竜也さんの口の中を動き回りました。竜也さんの歯、竜也さんの歯茎、竜也さんの口腔。竜也さんの口の中を隈なく舐め回ります。
「…ん…ッ、…んんんん…ッッッッ!!!!」
「んんんんッッッッ!!!!んんんんッッッッ!!!!」
そして、更に驚いたことには、竜也さんの舌が、蠢いている僕の舌を絡み取るかのように絡まって来たんです。
「…ん…ッ、…んふ…ッ!!」
「…は…ッ、…ああ…ッ!!」
僕達は甘い吐息を漏らします。
(…竜也…、…さん…!!)
竜也さんのキスは物凄く上手くて、僕の方がとろけそうになってしまうほどでした。
…クチュッ!!…クチュクチュ…ッッッッ!!!!…クチュクチュクチュクチュ…ッッッッ!!!!
くすぐったい音が部屋中に響き渡ります。
そしてその時、僕を更に驚かせることが起こっていたのでした。