僕だけのヒーローU 第1話
ガチャッ、ギィィィ…!
金属が錆びた、鈍い音が響きます。そこは真っ暗な空間でした。
コツ、コツ…。
僕の足音が、その空間に響きます。その音の広がり具合から推測するに、そこはかなり広いと思われました。
どれくらい歩いたでしょうか。僕の目の前に、ライトに照られた一人の人が見えて来ました。両腕を鎖で後ろに縛られて、足を肩幅程度に開いて立たされているようです。
その人は、キラキラと輝く赤いものを身に纏っています。それは上半身から下半身まで1枚の生地で作られているようでした。そして、それは僕が知っているデザインによく似ていました。よく似ている、と言うのには、1ヶ所だけ違いがあるのです。
それは胸の部分のデザイン。僕が知っているデザインは、胸の部分に赤い下向きの矢印を象ったようなものがあって、その周りは白であしらわれています。でも、目の前にいる人のデザインは、胸の部分は赤い下向きの三角形であるものの、三角形の部分がギザギザに波打っていたのです。そして、その周りは黒であしらわれていました。
体にピッタリと吸い付くようになっている、光沢のある赤いスーツは、その人、男性の体付きをクッキリと表していました。腕や胸、お腹、足の筋肉の付き方がクッキリと浮かび上がって、何だか、妙な感情を抱かせます。
不意に、その人の頭がピクリと動きました。そして、項垂れていた頭をゆっくりと上げ、僕と目が合いました。
「…シオン…」
鋭い目付きで僕を睨み付ける男性。
「気が付いたようですね、直人さん?」
僕はそう言うと、その男性、直人さんのもとへ駆け寄りました。
「…どう言うつもりだ、…シオン…?」
直人さんが僕を睨み付けます。その顔は静かに僕を見ているものの、怒りが込み上げていると言った様子で、少しだけ顔が紅潮していました。
「だから、何度も言ってるでしょう?」
僕はそう言うと、直人さんに抱き付き、背中へ腕を回しました。
「…僕の、…僕だけのヒーローになって下さいよ!」
僕は直人さんの胸に顔を埋めます。トクン、トクンと直人さんの心臓の音が聞こえて来ます。暖かい、直人さんの体。
「…離せ…」
上から低い声が聞こえて来ました。僕は思わず直人さんを見上げます。
「…離せと言っているんだ、…シオン…!」
直人さんは表情一つ変えずに、僕をじっと見つめています。僕はニッコリとして、
「直人さんが僕のヒーローになってくれたら、離してあげますよ?」
と言いました。その時でした。
「ふざけるなッ!!」
いきなり直人さんの怒鳴り声。
「俺は、お前らみたいな仲良しごっこをしているようなやつらとは違う!」
そう言うと、少し気を落ち着けようとしたのか、少し息を整えて、
「…俺は、…一人だ…!」
と言いました。
「だからぁ!」
僕はそう言うと、再び直人さんに抱き付きました。そして、右手で直人さんの股間をそっと包み込んだのです。
「んなッ!?」
直人さんがビックリして、体を離そうとします。でも、僕は左手で直人さんの背中を抱き、右手で直人さんの股間を揉みます。
「やッ!!…止めろッ!!…クソガキッ!!」
直人さんが体を暴れさせます。
「いいじゃないですか?」
僕はそう言うと、その右手に力を込め始めます。
「…うぐッ!?…ああッ!!…ぐああああッッッッ!!!!」
直人さんが悲鳴を上げます。
「…僕の言う通りにしないと、…大切なところが使い物にならなくなりますよぉ?」
そう言いながら、僕は右手に更に少しずつ力を入れて行きました。
「ぐわああああッッッッ!!!!」
直人さんの低い叫び声が辺りに響き渡りました。
…あ。
皆さん、お久しぶりです。シオンです。
いきなりな展開でごめんなさい。きちんと説明しないとダメですよね?
えっと…。
結論から先に言うと、この男性は、僕達と一緒に戦ってくれていたタイムファイヤーの滝沢直人さん。20世紀の人間で、僕のヒーローの1人であるタイムレッドの浅見竜也さんとは同級生。そんな直人さんが、僕の更なるヒーローになってくれたんです。
じゃあ、何で、直人さんはこうやって反抗しているかって?
いえいえ、反抗しているわけじゃないんですよ。
「…ッ!!…痛てッ!!…痛てええええッッッッ!!!!」
突然、直人さんが素っ頓狂な声を上げ始めました。
「…シッ、…シオン様ッ!!…痛てぇッ!!…つ、…潰れるッ!!」
顔を真っ赤にして、叫び声を上げる直人さん。
「…あ!!」
皆さんに説明をするのに気を取られ、右手の力の入れ方を考えていませんでした。
「ごッ、ごめんなさいッ!!」
僕は慌てて、直人さんの股間から手を離し、後ろ手に縛っていた直人さんの両腕を解きました。
「…ッ…!!」
直人さんが股間を押さえてその場に蹲ります。直人さん、僕のためにタイムファイヤーにクロノチェンジして遊んでくれているのです。もちろん、マスクは外した状態で。
「大丈夫ですかッ、直人さんッ!?」
僕はそう言いながら、とある機械のスイッチを切りました。
その途端、広い空間のように思えていたバックグラウンドが瞬時に消え、いつも見慣れている僕の部屋へ景色が変わっていました。つまり、僕達は広い空間には最初からいなかったんです。僕が作り出した、擬似風景を作り出すシュミレーターを作動させていたのです。
「…だ、…大丈夫です…」
そう言うと、直人さんは僕にニッコリと微笑みかけて来ました。
「本当にすみません」
僕はそう言うと、直人さんを立ち上がらせました。そして、直人さんの股間に再び触れました。
「んッ!!」
直人さんがピクリと体を反応させます。
「…直人さん、…勃起してる…!」
僕は思わず息を飲み込みます。タイムファイヤーの赤い光沢のあるスーツの中で、直人さんの大きなペニスが一際大きく目立っていました。
「…シオン様に触られて、握られて、興奮してしまったようです…」
そう言うと直人さんは僕をギュッと抱き締めました。そして、僕を上から見下ろします。
「…私を、…もっと甚振って下さい…!」
「…直人さん…」
僕がニッコリとすると、直人さんもニッコリとし、僕に優しくキスをしてくれました。