僕だけのヒーローU 第2話
「それにしても驚いたよなぁ…!!」
トゥモローリサーチ。僕達が生活の拠点としている、事務所兼自宅。ぽかぽかと暖かい日差しに包まれた一室で、僕達は平和なひと時を過ごしていました。
…あ。
すみません。また言い忘れてしまいましたね。
「僕達」と言うのは、僕に、竜也さんに、ドモンさん、そして、直人さんの4人が1つの部屋に集まっている、と言うことです。僕達はタイムレンジャーで、僕はタイムグリーンに、竜也さんはタイムレッドに、ドモンさんはタイムイエローに、そして直人さんはタイムファイヤーにクロノチェンジする、って言うのは説明不要かと思いますが。
で、最初に声を上げたのは竜也さん。竜也さんは、誰もが認める、僕の恋人です。
…あ。
僕の恋人って言うのを知らない人がいました。タイムブルーにクロノチェンジするアヤセさんと、タイムピンクにクロノチェンジするユウリさんです。まぁ、このお二人は僕達の輪の中へは決して入って来ないので仕方がないんですけど。
「まさか、直人までとはなぁ…!」
竜也さんが信じられない、と言う表情で僕と直人さんを交互に見つめます。
…あ。
これもきちんと説明しないといけないですね。
竜也さんとドモンさんは僕のヒーローで、僕をいつも守ってくれたり、一緒にいてくれたりします。時には、ヒーローごっこみたいなことをして、竜也さんとドモンさんをあの手この手でやっつけてしまうんですが。しかも、普通にやっつけてしまうのは面白くないので、ちょっとエッチなことをして、お二人を思い切り悶えさせるんです。
それは、竜也さんとドモンさんの男としての象徴であるペニスを甚振って、強制的に射精させるんです。お二人は今ではその快楽の虜となり、ほぼ毎日のように僕に甚振られてくれます。そんな中へ、直人さんも入って来た、と言うわけなんです。
「なぁなぁ、直人ぉ!」
ドモンさんがニヤニヤしながら、直人さんを突きます。
「どうやってシオンに丸め込まれたんだよ?それとも、お前にも虐められたい願望があったのかぁ?」
すると直人さんは一瞬、ムッとした表情をしました。でも、すぐにフッと笑って、
「俺は自分の気持ちに素直に動いているだけだ」
と言いました。
「じゃあさぁ!」
ドモンさんが顔を更にニヤニヤさせて、直人さんに詰め寄ります。それに思わず後ずさりする直人さん。
「やっぱり、シオンに虐められたいって思ってたってことかぁ?」
「…バカか、…お前は…?」
直人さんのこめかみがぴくぴくと動いています。直人さんがかなりムカムカし始めているって証拠です。
ドモンさんと直人さん、あんまり仲が良くないんですよねぇ…。
「あん?」
するとドモンさんまで眉間に皺を寄せ、
「誰がバカだってぇ!?」
と今にも直人さんに掴み掛からん勢いです。
「…俺は素直にシオン様がかわいいと思ったから、今、こうして一緒にいるって言うだけだ」
「じゃあ、何でオレ達と同じことをされて悦んでんだよッ!?」
すると直人さんは、急に僕の肩をグイッと抱き寄せて、
「シオン様の好きなようにさせてやりたいと思うからだ。そのためだったら、何だってやるさ」
と言い、
「おい、浅見」
と言って今度は竜也さんを見ました。
「…なッ、…何だよッ!?」
不意に振られて、竜也さんが驚いて声を上げます。直人さん、竜也さんのことを苗字で呼ぶんですよね。
「お前がきちんとシオン様を守ってやらないのなら、俺が貰うぞ?」
「はぁ!?」
竜也さんがあんぐりと口を開けて言います。
「オレはちゃんとシオンを守ってるよッ!!だいたいなぁ、オレとシオンは…!!」
「あああ、もう止めて下さいよッ!!」
このままだとこの3人が喧嘩になりそうです。僕は慌てて3人の中に入りました。
「直人さん」
僕はじっと直人さんを見つめました。
「…気持ちはありがたいんですけど、僕は竜也さんが大好きなんです。…竜也さんじゃなきゃ、ダメなんです」
「…シオン…様…」
直人さんが僕の名前を呼びます。
「ぶっ!!」
と、突然、ドモンさんが吹き出し、火がついたように笑い始めました。
「ギャハハハハハ…ッ!!…なッ、…直人…ッ!!…一発で、…玉砕…してやんの…ッ!!」
「…ドモン…!!」
腕をブルブルと震わせながら、直人さんが呻くようにドモンさんを呼びました。
「…表へ出ろ…!!」
その手にはブイコマンダーが握られていました。
「もうッ、止めて下さいってばッ!!」
僕はそう言うと、直人さんの腕を掴みました。
「ドモンさんも、直人さんも、喧嘩は止めて下さいッ!!僕のヒーローであり続けたいなら、これ以上、喧嘩はしないで下さいッ!!」
「…シオン…」
「…シオン…様…」
ドモンさんも、直人さんも、僕をじっと見つめています。
「…あ!!」
その時、僕の視線は壁に掛けられていた時計を見ていました。
「いっけないッ!!僕、次の約束があったんです!!」
そう言うと僕は、急いでスタッフジャンパーを羽織り、
「みんなで仲良く、ね!」
と軽くウインクをして外へ飛び出しました。
「…な、…なぁ、…竜也ぁ…」
僕がいなくなった部屋には、竜也さん、ドモンさん、直人さんが取り残されていました。ドモンさんが竜也さんを呼びます。
「…あいつ、…オレ達の喧嘩の原因が自分だって分かってんのかな…?」
「…さぁ…」
「さぁ、って何だよッ、さぁってぇッ!?」
ドモンさんが竜也さんに掴み掛かります。
「しッ、知らないよッ!!…でも…」
そう言うと竜也さんは笑顔を浮かべました。
「…シオンが楽しければ、…それでいいんじゃないのか…?」
「…フッ!」
今度は直人さんが笑いました。
「まぁ、お前らはお前らで好きにやれよ。俺は俺で、お前らの邪魔はしないように、好きにやるさ」
そう言うと、直人さんも部屋を出て行きました。