僕だけのヒーローU 第14話
「…あ…あ…あ…あ…!!」
僕の部屋の入口が物凄い音を立てて開き、そこにはタイムレッドにクロノチェンジする竜也さんが立っていました。普段から大きな瞳をしている竜也さんが、今にも飛び出るのではないかと言うほど大きく目を見開き、口をパクパクとさせています。
「あ、お帰りなさい、竜也さん!」
僕はニコニコしながら竜也さんのもとへ駆け寄ります。
「…シッ、…シオンんッ!!」
すると竜也さんは突然、僕の両肩をぐっと掴み、腰を落としました。そして、
「…これは、…どう言う…ことなんだい…、…シオン…?」
と聞いて来たのです。その時でした。
「お前が悪いんだ、竜也!」
僕の部屋の奥にいた、真紅のクロノスーツを着ている直人さんが言いました。直人さん、今はタイムファイヤーにクロノチェンジしているのです。
「お前がしっかりとシオン様を受け止めてあげないからだ…」
そう言って僕達の方へ振り向いた直人さんを見た途端、
「…なッ、…直人ッ!?…お前…ッ!!」
と竜也さんが更に口をパクパクさせます。
それもそのはず。
光沢のある真紅のクロノスーツ。その股間部分が光沢を失っているどころか、そこから直人さんの真っ黒な、未だに勃起をし続けるペニスが飛び出し、直人さんの心拍に合わせるかのようにビクン、ビクンと脈打っていたのです。そして、そんな直人さんと少し離れたところには、直人さんが飛び出させた濃白色な精液があちこちに飛び散っていたのです。
「僕が直人さんをいじめて強制射精させたんですよ!」
僕はニコニコしながらそう言いました。
「シッ、シオンんッ!!」
竜也さんが忙しなく目を僕と直人さんへ動かします。
「どうしたんですか、竜也さん?そんなに慌てて…」
僕は本気で分かっていませんでした。すると、直人さんがそんな竜也さんの表情を察したのか、ツカツカと僕の背後へやって来たかと思うと、
「シオン様。きちんと説明しないと、竜也には分かりませんよ?竜也とは恋愛関係にあるのでしょう?そんなシオン様が私とこんなことをしていたと言うのは、ましてや、竜也達に嫌われている私が、シオン様と2人きりでいると言うのは信じられないに決まっていますから」
と言いました。
「そうなんですか、竜也さん?」
こんな時、お二人の友情が羨ましいです。互いに反目し合っていても、心のどこかではちゃんと通じている、そんなお二人が。すると、竜也さんは、
「…あ?…あ、…ああ…」
と言いました。
「じゃあ、ちゃんとご説明しますよ」
僕はそう言うと竜也さんと直人さんの手を引っ張りました。
「うおッ!?」
「シッ、シオンんッ!?」
突然のことにお二人が声を上げます。僕はお二人をソファに座らせ、お二人の間に僕が入るようにして座りました。
「シオン様?」
タイムファイヤーのクロノスーツを解除し、上下の青い作業服に身を包んだ直人さんが僕に声をかけました。
「…僕は、…みんなに仲良くなって欲しいんです…」
切実な願いでした。一緒にロンダーズファミリーと戦っているのに、身内で争うようなことはしたくなかったんです。
「…僕は、…竜也さんも…」
そう言って僕は竜也さんを見上げます。そして、今度は直人さんを見上げ、
「…直人さんも…、…みんな、大好きなんです!…でも…」
と言い、少し俯きます。
「…直人さんに会えば、竜也さんもドモンさんも喧嘩ばっかり。…直人さんだって、本当は物凄くいい人なのに、なかなか心を開いてくれなかった。僕はそんなみんなの関係が嫌で堪らなかったんです!!」
そう言うと僕は立ち上がり、
「クロノチェンジッ!!」
と言い、クロノチェンジャーを操作しました。その瞬間、僕の体が光ったかと思うと僕の体は光沢のある鮮やかな緑色のクロノスーツに包まれ、僕はタイムグリーンへクロノチェンジしていたのです。
「…シオン…」
「…シオン様…」
竜也さんも直人さんも呆然と僕を見ています。と言うか、僕の体の1点に目を奪われていたのです。
「…へへ…」
僕ははにかんだ笑顔をお二人に向けました。
僕の股間。男の子としての象徴が大きく勃起し、クロノスーツの中で臍へ向かって真っ直ぐに伸びていたのです。
「…僕、カッコいい竜也さんや直人さん、ドモンさんのことを考えるとこんなになっちゃうんですよ!…確かに、僕は竜也さんのことが一番大好きです。大事な人です。でも、ドモンさんも直人さんも好きなんです。僕よりも大きな3人にずっと傍にいて欲しい、そう思うんです」
竜也さんから見れば、ドモンさんともこんなことをしていると言うのはおかしなことだと言うかもしれません。でも、僕は竜也さんのことが一番好きだけど、ドモンさんにも、そして、直人さんにも自分に正直でありたいと思っているんです。
「…竜也さん、ごめんなさい…」
僕は竜也さんに頭を下げました。
「…本当は、…嫌でしょうね。…僕が、ドモンさんや直人さんとこんなことをしているのは…。…ましてや、…誰にも内緒で直人さんを呼んでいることも…。…でもッ、…僕は、…直人さんにも一緒にいて欲しいんです。…僕は、…本当に、…みんなが、…大好きだから…!!」
いつの間にか、僕の目からはぽろぽろと涙が溢れていました。
「…直人さん…」
涙が溢れた目で、直人さんを見つめる僕。
「…いつまでも、…一匹狼を演じないで下さい…。…もっと、…自分に素直になって下さい…。…少なくとも、僕や、…竜也さんの前では、…ありのままの…自分で…、…いて…下さい…よぉ…ッ!!」
その時でした。
「…ったく…!」
直人さんがガシガシと頭を掻きながら立ち上がり、大きく溜め息を吐きました。
「…参りましたよ、…シオン様には…!!」
そう言うと、ぐしぐしと泣いている僕を静かに抱き締めました。
「ああ〜ッ!?」
それを見た竜也さんが大声を上げ、慌てて僕を引き離します。
「…フッ…!」
「…フフ…ッ!」
「…?」
直人さんと竜也さんが同時に笑い始め、僕は突然のことにお二人を交互に見つめます。
「…シオン様…」
直人さんは、僕を背後から抱き締めている竜也さんと僕の前に跪き、
「…これからも、…私はシオン様の奴隷です…」
と言い、
「いいよな、竜也?」
と竜也さんに言いました。すると竜也さんは、ニッコリと微笑んで、
「ああ!ただし、オレが一番の奴隷だからな!」
と言いました。
「…フッ!」
直人さんは笑うと、窓際へ歩いて行き、窓を開けました。
「…では、シオン様。竜也。私は今日はこのくらいで帰りますよ。他の連中と鉢合わせるともっと大変なことになるでしょうから」
と言い、大きくジャンプしたかと思うと、窓枠を乗り越えて僕の部屋を出て行きました。
「…ったく…!」
竜也さんが苦笑します。そして僕を意地悪い瞳で見つめると、
「こらっ、シオンッ!!オレに黙って直人に会ってるなんて…!」
と言い、僕の首を絞める真似をしました。
「ごめんなさい、竜也さん。でも僕、直人さんにも仲良くしてもらいたかったから…!」
僕がそう言うと、竜也さんはくしゃくしゃと僕の頭を撫でて、
「そんな優しいシオンが、オレは大好きだよ!」
と言い、僕に静かにキスをしてくれたのでした。タイムグリーンにクロノチェンジした僕と、普段着姿の竜也さん。いつもと逆の光景が、そこにはあったのでした。