僕だけのヒーローU 第15話
「…なッ、…何だよッ、これッ!?」
しんと静まり返った、人気のない廃工場のようなところに、やや甲高い男性の声が響き渡りました。
「…くッ!!…はッ、…放せぇッ!!」
そして、やや低めの太い男性の声も響きます。
と同時に、ガチャガチャと言う乾いた金属音も聞こえて来ます。
甲高い声の男性も太い声の男性も、光沢のある鮮やかな赤色のクロノスーツを身に纏っています。その胸の部分は、一方は白色で、一方は黒色です。
「…ククク…!!」
僕は低い声で笑いました。
「…さぁ…、…今日は君達を快楽地獄へと突き落としてあげますよ…!」
…あ。
また、何にも説明もなしにいきなり話を進めてしまいました。タイムグリーンのシオンです。すみません。
タイムレッドの浅見竜也さんと、タイムファイヤーの滝沢直人さんが少しずつ元の絆を取り戻し始めてから数日が過ぎました。その数日の間にも、竜也さんと直人さんは別々ではあるけれど僕のところへ足を運んでくれるようになり、僕も幸せな日々を送ることが出来ていました。
そんな時でした。
ピンポーン!
僕の部屋の呼び鈴がいつものように鳴りました。
今、僕達が生活の拠点としているトゥモローリサーチには、相変わらず僕しかお留守番がいません。でも、僕の部屋の呼び鈴が鳴ったと言うことは、竜也さんが戻って来たと言うことを意味していたのです。
「はぁいッ!!」
僕は急いで入口まで駆け寄り、ドアを開けました。
「よッ!シオン様ッ!!」
そこには、竜也さんが眩しい笑顔を浮かべて立っていました。
「竜也さぁんッ!!」
嬉しくなった僕はそう言うと、竜也さんにギュッと抱き付きました。
「お待たせしてすみませんでした、シオン様ッ!!」
そう言うと竜也さんは僕を優しく抱き締め返してくれました。
「竜也さん、仕事の方は大丈夫ですか?」
いくら僕に会うためだからと言っても、仕事を疎かにしてしまうのも申し訳ないです。僕は敢えて竜也さんにそう尋ねました。すると竜也さんは悪戯っぽい笑みを浮かべて、
「問題ないって!オレの相棒が助けてくれたしな!」
と言ったのです。
「…相棒?」
竜也さんの相棒って、誰なんでしょう。タイムブルーのアヤセさんや、タイムピンクのユウリさんは絶対に違うはず。となれば、一緒にバカなことをやるタイムイエローのドモンさんでしょうか。
すると竜也さんはフフン、と笑って、
「シオン様。窓の外を見てみて下さいよ」
と言ったのです。
「…窓…?」
と言うことは、あの人しかいません。
「また、遊びに来ましたよ、シオン様」
窓を開けると、その壁際に直人さんが立っていました。そして、
「よっと!」
と声を上げ、僕の部屋の中へ入って来ました。
「直人さぁんッ!!」
ますます嬉しくなって、僕は直人さんにも抱き付きました。
「お疲れッ、直人ッ!!」
竜也さんはそう言うと、右手を軽く上げます。すると直人さんはフッと笑い、
「正面から入ったらいけないのか、俺は?」
と言うと、竜也さんの右手と合わせてハイタッチしました。
「だってさぁ、シオン様以外に誰かがいたら困るだろ?」
「…まぁな」
そう言ってお互いにニヤリと笑う竜也さんと直人さん。
本当に幸せでした。少し前まではお互いにいがみ合っていた竜也さんと直人さん。タイムレッドとタイムファイヤー。同じ赤色のヒーロー同士なのに、まるで磁石のS極とS極のように反発し合って…。でも今は、どちらからともなくN極になったようで、お互いが引き合う、昔の竜也さんと直人さんに戻ったようです。
「でもまぁ、これもみんな、シオン様のお陰ですね!」
竜也さんが背後にやって来て、後ろから僕を抱き締めます。
「…竜也さん…。…直人さん…」
交互に2人を見る僕。
その時でした。
「「クロノチェンジ!!」」
示し合わせたかのように、竜也さんと直人さんが同時にそう言った瞬間、お二人の体が輝き始め、竜也さんはタイムレッドに、直人さんはタイムファイヤーにクロノチェンジしていたのです。
「…わぁ…!」
僕は、そう声を上げざるを得ませんでした。光沢のある鮮やかな赤色のクロノスーツに包まれたお二人。そのキラキラに、更にカッコいいお二人の眩しい笑顔。それに僕は思わずやられてしまいそうでした。
「…やっぱり、…カッコいいです。…竜也さんも、…直人さんも…!」
僕はそう言うと、左手を前に、右手を後ろへ持って行きました。その瞬間、
「「んんッ!!」」
とお二人が呻き声を上げました。
僕の両掌の中には、お二人の股間が優しく包み込まれています。
「…どっちも大きい…!」
僕はそう言うと、ゆっくりとそれらをクニュクニュと揉みしだき始めました。
「…んッ!!…んん…ッ!!」
「…くッ!!…うう…ッ!!」
竜也さんの高めの声と、直人さんの低めの声、そしてお二人の甘い吐息が僕に降り掛かります。
「フフッ!」
僕は思わず笑ってしまいました。
「…じゃあ、…今日もお二人をいじめますよ?」
僕はそう言うと、
「竜也さん、直人さん。並んで立ってもらえますか?」
と言いました。
「…あ、…あぁ…」
竜也さんがそう言って動き出すと、
「…こうですか?」
と、竜也さんに釣られるようにして動いた直人さん。
「じゃあ、次。空間を歪めます!」
そう言うと、僕は時空制御装置のもとへ歩み寄り、スイッチを押しました。
「うおッ!!」
直人さんが素っ頓狂な声を上げます。
「…いつ見ても、…気持ち悪いぃ…!」
空間がぐにゃりと歪み、竜也さんが思い切り顔を歪めてそう言いました。
「…ここは?」
暫くすると、僕達はしんと静まり返った廃工場のようなところにいました。と言うか、そう言う空間を作り出したんですけどね。
「はい。じゃあ、次。竜也さんも直人さんも大きくバンザイして下さい」
僕がそう言うと、
「…こうですか?」
と今度は竜也さんが言い、両手を頭上へ上げました。直人さんは何も言わず、両手を頭上へ上げました。
と、その時でした。
ガシャンッ!!ガシャンッ!!
乾いた金属音が聞こえたかと思うと、
「んなッ!?」
「…え?」
と言う竜也さんと直人さんの声が同時に響きました。
「…フフフ…!!」
その光景に、僕は思わず笑ってしまいました。
「…シッ、…シオン…様…?」
竜也さんの顔が蒼くなっています。
「…クロノチェンジ…!」
その時、僕の体が眩しく輝き始めました。
「…言ったでしょ?…お二人をいじめるって…!!」
僕を包み込んでいた光が消えた時、僕はタイムグリーンにクロノチェンジしていたのでした。