僕だけのヒーロー 第37話
今日は日曜日。
皆さん、営業も一休みで思い思いの行動を取っています。
タイムピンクのユウリさんはやっぱり女性。朝からおしゃれをして買い物に出かけています。タイムブルーのアヤセさんは何も言わずに出かけました。
「…」
僕はと言うと、リビングの椅子に腰掛けたまま、虚ろな眼差しを床に投げ掛けていました。特に何かをやると言うわけでもなく、ただ、本当にぼんやりと。そんな僕をじっと見つめていたタイムイエローのドモンさんは、小さく溜め息を吐くと僕の前で跪き、
「…シオン様…。…どこか、出かけませんか?たまには気分転換しないと…!!」
と、すっかり僕の奴隷状態。僕の目の前で片膝をついて座り、じっと僕を見上げています。
「…いえ…。…僕は…」
それ以上、言葉が出て来ません。少しの沈黙の後、ドモンさんは小さく溜め息を吐いて、
「…そっか…」
と言いました。その時のドモンさん、とても寂しそうな表情をしていました。けれど、その想いを振り切るかのようにブンブンと頭を振るとスクッと立ち上がり、僕の頭をポンポンと叩きました。
「あんまり思い詰めるなよ?」
そう言うとドモンさんは僕を立ち上がらせ、ギュッと抱き締めました。
「…ドモン…、…さん…?」
「大丈夫だ、シオン」
ドモンさんの優しく、力強い声が頭の上から降り注ぎます。
「え?」
思わず、見上げていました。するとドモンさんは、
「…大丈夫だ、シオン。…きっと、…上手く行く…!!」
とだけ言うと、ニッコリと微笑み、何も言わずに部屋を出て行きました。
「…ドモンさん…?」
ドモンさんの言葉が妙に引っかかりました。
実はこのところ、僕は元気がありません。
「…竜也さん…」
ドモンさんから聞かされた衝撃の事実。
竜也さんが。タイムレッドにクロノチェンジする、僕の憧れの竜也さんが僕を好きだったと言うこと。それなのに、それを知らなかった僕は竜也さんを振り向かせたくて、竜也さんを無理矢理犯してしまいました。
そして。
僕は、僕を好きだって告白してくれたドモンさんと…。
改めて僕は部屋をぐるりと見回しました。
「…ドモンさん…」
この間、僕はこの部屋でドモンさんとエッチをしてしまったんです。ドモンさんはタイムイエローに、僕はタイムグリーンにクロノチェンジして。ドモンさんをいじめるだけじゃなく、僕までもドモンさんに絶頂に導かれてしまって…。
その時、ドモンさんは僕のことを本当に心配してくれて、僕のヒーローになるなんて宣言して。今では公私共に凄く僕を助けてくれます。
「…でも…」
でも。
本当を言えば、僕は竜也さんのことが大好きで。でも、竜也さんは僕のことが好きなはずなのに、何のリアクションも見せてくれません。
ドモンさんは、
「竜也を信じろ!!絶対に大丈夫だから!!」
と言ってくれます。
でも…。
「…本当に…、…信じて…いいん…です…か…?」
疑いたくないけど疑ってしまいます。
「…僕…」
いつの間にか僕の目には涙が溢れていました。
「…竜也さん…」
止め処もなく涙が零れ落ちます。
「…竜也…さぁん…。…僕…、…僕ぅ…、…どうしたらいいのか、分からないです…!!」
その時、僕はあることに気付きました。
「…そう言えば…」
その竜也さんを朝から見ていません。どこへ行ったんでしょう…。
その時でした。
ピンポーン!!
僕の部屋のチャイムが鳴りました。
「…まさか…ッ!?」
僕の足は無意識に速くなり、急いで入口まで走りました。そして、扉を思い切り開けたのです。
「うわあッ!!」
大きな声が聞こえた時、目の前に立っていた1人の男性。
「…ビッ、…ビックリしたああああッッッッ!!!!」
大袈裟に驚いていたのは、紛れもなく竜也さんでした。
「…良かった。…シオンが部屋にいなかったらどうしようかって思ったよ」
安堵した表情でニッコリと微笑む竜也さん。でもすぐに、
「…どうしたの?」
と、竜也さんは僕の部屋の中に入りながら、僕の顔を見て言いました。
「…オレのせい?」
「…ふ…ッ、…うううう…ッッッッ!!!!」
僕の顔は涙でぐしゃぐしゃ。そんな僕を、竜也さんは優しく抱き締めました。
「…オレが…。…いつまでもしっかりしないから?」
「…」
僕は何も言えずにいました。
「…取り敢えず…。…話、させてくれないかな?」
「…どうぞ…」
僕と竜也さんは奥の部屋へ行くと、ベッドに腰掛けました。
(…ここで…)
最初、ここで僕は竜也さんを犯しました。竜也さんの男としての象徴であるペニスを刺激して、何度も意地悪して絶頂へ導かなくて。
「…ねぇ、シオンん…」
竜也さんが僕を呼びました。でも、僕は俯いたまま竜也さんの話を聞いています。
「…辛い思いをさせて…、…ごめん…」
竜也さんがポツリと言いました。
「…ドモンから聞いたかもしれないけど…。…オレ、最初からシオンが好きなんだ。シオンと初めて出会った時からずっと。…でもオレ、情けないよね?自分で好きだって言えないんだもん。…だから、こんな最悪なコクリ方になっちゃった」
そう言うと竜也さんは僕を立ち上がらせ、ギュッと抱き締めました。
「…今更なんだけど…。…好きなんだ、シオンッ!!」
「…僕は…」
嬉しいのに素直になれない自分。物凄く嫌悪感を抱きます。
「…僕は…。…最初から、竜也さんの口からその言葉を聞きたかったです。…今でもホントに好きです。ドモンさんも好きだけど、竜也さんの方がもっと好きなんです!!」
「…シオン…」
竜也さんが僕と向かい合いました。
「辛い思いをさせて本当にごめん。…だから…、…改めて言わせてくれるかな?」
そう言うと、竜也さんは片膝をついて僕の前にしゃがみ込みました。
「シオン様が大好きです。改めて、シオン様のヒーローになることを誓います!!」
「…竜也さああああああああああああああああんんんんんんんんんんんんんんんんッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
堪え切れなくなって、僕は竜也さんの胸に飛び込んでいました。
「うわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
バランスを崩した竜也さんが悲鳴を上げて後ろへひっくり返ります。
「…竜也…さん…ッ!!竜也さん竜也さん竜也さん竜也さんッッッッ!!!!」
僕の目からは後から後から涙が溢れて来ます。
「…いいよ、シオン。…好きなだけ、泣いても…」
しゃくり上げる僕を竜也さんはギュッと抱き締めてくれていました。