僕だけのヒーロー 外伝第2話

 

「…どーしよー…ッッッッ!!!!

 その時、オレはちょっと、いや、か〜な〜り、後悔していた。

「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!

 頭を抱え、自分の部屋で床の上をゴロゴロと左右に転がっている。

「…や…っち…、…まった…!!

 思い出せば出すほど、顔が熱い。それだけじゃない。

「はうッ!!

 ビリビリとした強烈な電流が、オレのムスコさんから流れて来る。

「…い…、…痛…て…ぇ…ッ!!

 オレの2本の足の付け根部分に息づく、オレの男としての象徴・ペニス。それが今、明細柄のズボンの中で大きく勃起し、テントを張っていた。それが、オレがゴロゴロと床を転がるたびに擦れ、時々は両方の足に押されてグニュッ、と音を立てる。

「…はぁぁ…」

 オレは起き上がると、虚ろな視線を床に投げ掛けたまま、大きな溜め息を吐いた。

「…シオンと…、…やっち…、…まった…!!

 勢いとは言え、仲間であるシオンといかがわしいこと、つまり、一線を越えた、つまり、エッチなことをしてしまった。オレはタイムイエローに、シオンはタイムグリーンにクロノチェンジして。

「…やべえ…ッ!!…やべえよ…、…絶対…ッ!!

 オレは、シオンの純真無垢な、誰ともエッチしたことがないであろう体を最初にいただいてしまった。シオンは、本当はオレと同じようにドルネロ達と戦っているタイムレッドの竜也が好きだと言うことも知っていた。

「…けッ、けどよぉ…」

 そんなこと言ったって。

 竜也は竜也で全然不甲斐ないし、シオンが不憫でならなかった。それにオレだってシオンのことが好きだ。だから、我慢が効かなかったと言った方が早いかも…。

「…いッ、いやいやッッッッ!!!!

 そうじゃないッ!!

 オレ自身、我慢が効かなかったのもそうだが、シオンの気持ちを考えたらいてもたってもいられなくなった。

「…うん…ッ!!…そうだ…ッ!!

 そうだッ!!それもこれも、みぃんな、竜也が悪いんだッ!!竜也がいつまで経ってもシオンにきちんと自分の気持ちを言わないから。だから、オレはシオンのナイトになりたかった。忠実な部下、シオンから言わせれば、奴隷になりたかった。でも、それは竜也だって同じこと。竜也だってシオンのナイトになりたいって言っていたし。

 

「お〜い、竜也ぁッ!!

 その時、オレは竜也の部屋の前にいた。竜也はさっき、営業から部屋に帰って来たはずだ。

「…?…竜也ぁ?開けるぞぉ?」

 シュンッ!!

 竜也の部屋の扉を開いた時、オレは目を点にした。

「…竜也?」

 目の前にはぼんやりとベッドに座っている竜也がいる。

「竜也ってばッ!!

「…」

 オレが声を掛けるのに、竜也はオレに気付いていないのか、振り向こうともしない。

「竜也ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 ぶぅん、と言う音が聞こえるほどに大きくダイブすると、オレは竜也に抱き付き、背後へ押し倒した。

 その時、初めて竜也の視線が動いた。けれど、時、既に遅し。

「うわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 オレと竜也は一緒にベッドに倒れ込んでいた。

「…ちょ…ッ、…ちょっと…ッ!!…ドッ、ドモンッ!?…いッ、いきなり何だよッ!?

 顔を真っ赤にし、至近距離でオレに怒鳴る竜也。けれどオレは、

「るっせ!!気付かないお前が悪いんだ!!

 と言うと、ゆっくりと竜也と離れた。

「…どうしたんだよぉ、竜也ぁ?ぼんやりしちゃってさぁ?」

 その時だった。

「…ドモンん…」

 不意に竜也が涙目になった。

「どッ、どうしたんだよッ、竜也ぁッ!?

「…どうしよう…」

「え?」

 何となくだけど、竜也の口から次に出るであろう言葉が分かった。

「…シオンのこと?」

 何となくピンと来たオレは竜也に聞いてみる。すると、竜也はコクンと頷いた。

「…え…、…えと…」

 その瞬間、オレは竜也の前にスライディング土下座をしていた。

「すまんッ、竜也ッ!!オレッ、シオンとエッチした!!

「…え?」

 竜也はきょとんとしている。

「…だッ、だからッ!!…シッ、シオンの初めてをッ、…オッ、オレがいただいちまったってことだッ!!

 顔から火が噴き出るほどに熱い。シュウウウウ、と言う音が聞こえるようだ。すると竜也は、

「…はぁ?」

 と、何とも間の抜けた声を出す。

「…でッ、でもッ、竜也が悪いんだからなッ!!

 そう言った時、竜也の顔がピクリと揺れた。

「…竜也がいつまで経っても自分の気持ちをシオンに伝えないからだぞッ!?…シオンは竜也のことが凄く好きで、ホントは竜也に犯されたいって言ってた!!…でも、竜也が何も言わないからッ!!何も反応しないからッ!!…オレッ、…オレッ!!…シオンが、不憫でならなかったんだッ!!

「…そう…だよなぁ…」

 いつもなら絶対に殴りかかって来るはずの竜也が殴りかかって来ない。それよりかますますしょげてしまっている。そして、

「…そっかぁ…。…シオン、エッチしちゃったんだ…」

 と、寂しげに笑った。

「しっかりしろよッ、竜也ああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 その時、オレはプッツンキレると、ぶぅんと言う音が聞こえるほどに再び大きくダイブし、竜也に飛び掛かってベッドに押し倒していた。

「…ドモン…」

 最初は驚いた表情をしていた竜也だったが、オレの表情を読み取ったのか、穏やかな笑みを浮かべていた。

「…エッチくらい誰だって何度もするだろうがッ!!それにオレだってなあッ、我慢出来なかったんだッ!!本当は竜也とシオンを見守りたいって思ってたッ!!でもッ、そのうち制御が効かなくなって来て…。そしたら、シオンが…」

 オレはそう言うと竜也に抱き付いた。

「…ドモン…?」

 気が付けば、オレは泣いていた。熱い涙がぽろぽろと零れ落ちる。

「…何とかしてくれよ、竜也ぁ…ッ!!。…竜也がいつまでもそんなんじゃ…、…オレも辛ぇよ…。…早く…、…オレも楽にしてくれよ…ッ!!…オレを…、…諦めさせて…くれよ…オオオオッッッッ!!!!

 オレの目からは止めどなく涙が溢れている。

(…そっか…)

 その時、オレはやっと気付いた。

「(…オレ…。…こんなにも、シオンのことが好きだったんだな…)…竜也…。…竜也ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

「…ごめんな…、…ドモン…」

 竜也の腕がオレをギュッと抱き締めた。その腕にはかなりの力が入っていた。

 これが竜也の決意だったと言うことを、その時のオレはまだ知らないでいた。

 

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