ジグザグ青春ロード 第3話
「…ふわああぁぁ〜…!」
翌日。
昨夜は全くと言っていいほど、眠れなかった僕。今は通学途中。
僕のクラスメイトで、ブルーターボとして一緒に暴魔百族と戦っている洋平の寝込みを襲ってしまったからだ。いや、襲うだけならまだしも、洋平の大きな股間のそれを口に含んでしまった。
今、思い出すだけでも僕の股間が硬くなる。洋平のそれは、ほんのり塩素の匂いがして、でもそれ以外に嫌な匂いもなかった。逆に、それを美味しいと感じてしまっている自分がいた。
(…僕、…本当に洋平が好きなんだな…)
そう思ったら、本当に胸が苦しくて。洋平といつまでも一緒にいたい、洋平の傍にいたい、洋平といちゃいちゃしたい…。何度もそう考えた。でも、洋平は僕と同じ男の子で、僕の思いを知ったら、きっと避けるに決まってる!そう思うと、昨日、僕がしてしまったことが、本当に良かったのだろうかと思えて来てしまって…。何よりも、洋平が、実は寝たフリをしていて、僕が洋平のを愛撫しているのに気付いていたとしたら…。
「…はぁ…」
今になって後悔。
「…あんなこと、…しなきゃ良かった…!」
と、その時だった。
「おっはよ、俊介!」
肩をすくめて歩く僕の肩をポンと叩いたやつ。朝から爽やかに言うやつ。
「…洋平ぇ…」
僕の右横に、件の人、洋平がにこやかに立っていたのだ。
「…ど、どうしたんだよ、俊介ぇ?目の下にクマが出来てるぞ?」
僕の表情を見るや否や、洋平が心配そうな表情になり、自分の目の下に指をやりながら、「クマ」と言った。
(んの野郎ッ、誰のせいだと思ってんだよッ!!)
僕は洋平に飛び掛りたい衝動に駆られたが、ぐっと堪えた。
「…別に。…何でもないよ…」
僕は大きく溜め息を吐き、ふと洋平を見上げた。洋平の方が身長があるので、僕はいつでも自然に見上げる形になってしまう。
「…洋平?」
洋平がやけにニコニコしている。と言うか、鼻の下が伸びてるぞ?
「…何か、いいことでもあったの?」
僕がそう尋ねると、洋平は更に表情を崩して、
「いやぁ、昨日さぁ、いい夢を見たんだよねぇ!」
と言った。
「…夢?」
「そ!」
すると洋平は遠い目をして、
「昨日さ、部活が終わってから、オレ、部室でウトウトしちゃったわけ。そしたらさ、夢の中でさ、オレの大切なところが食べられちゃってる夢を見たんだよねぇ!」
と言った。
「ぶっ!」
ちょうどその時、缶コーヒーを飲んでいた僕。洋平の言葉に思わずむせ返り、派手にコーヒーを吹き出した。
「うわッ!ちょッ、俊介ッ!?」
びっくりする洋平。そんな洋平の横でゲホゲホと咳き込む僕。
「…ご、…ごめ…!!」
ごめんと謝ろうにもまともに謝れない。僕の心臓は別の意味でドキドキしていた。
(…そ、…それって…)
僕が洋平のそれを口に含んでいることが、洋平の夢となって現実化していたってことか?だから、あんなに洋平は幸せそうな寝顔をしていたのか?
「大丈夫か、俊介ぇ?」
僕の背中を擦りながら、洋平が心配そうに見つめて来る。
「…だッ、…大丈夫だよッ!!」
僕は慌てて洋平の手を振り払った。
「…へぇ〜。…そりゃ、いい夢見たよね!」
僕は精一杯の笑顔を洋平へ向けた。すると洋平は一瞬、戸惑った表情を見せたが、すぐにニコッとして、
「ああ!すっげぇ、幸せだったぜ!」
と言った。
僕の胸はズキリと痛んだ。
「あ〜あ。また、あんな気持ちいい夢、見られねぇかなぁ!」
洋平がうっとりとした表情で言う。
「この変態!」
僕はそう言うと、洋平の頭を思い切り引っ叩いた。
「痛てッ!…なッ、何だよぉッ、俊介ぇッ!!」
背後で叫んでいる洋平を残して、僕は急いでその場を離れた。そうでもしなきゃ、僕がどうかなっちゃいそうだったから…。
「…お疲れ様でしたぁ…」
放課後。
一通り、体操部の練習を終え、僕は元気なく部室を出た。その目の前には、洋平の所属する水泳部の部室。その入口の扉は、この間と同じように少しだけ開いており、中から蛍光灯の光がうっすらと漏れている。
中から声が聞こえる気配はない。この間と同じだ。
(…洋平…?)
僕の心臓がドキドキと早鐘を打つ。中を覗きたい、でも中を覗いたって、洋平がそこにいたって、どうしようもないじゃないか…。
(うわああああッッッッ!!!!)
やっぱり中を覗いてしまった。その瞬間、僕は思わず叫び声を上げそうになった。
やっぱり洋平がいた。しかも、今日は何故か、ブルーターボに変身しているし!
(何てかっこうしてんだよぉッ!!しかも、誰かにバレたりしたら…!!)
僕は急いで部室の扉を静かに閉め、中から鍵をかけた。
「…ん?」
部室の鍵を無意識にかけた僕。
「…と言うことは…?」
そこで大変なことに気付いた僕。
(…よよよ、洋平と、…ふふふ、…二人っきりじゃねぇかぁッ!!!!)
頭を抱えながらも、でも、改めて洋平を見る僕。ブルーターボに変身したことで、洋平の筋肉の付き方がスーツにクッキリと浮かび上がっている。マスクはしておらず、甘い、精悍な顔付き。穏やかに上下する胸。
「…洋…平…」
僕はゆっくりと洋平に近付いた。その途中で、僕の体が光り、僕もイエローターボに変身していたんだ。そして、辿り着いた場所はこの間と同じく、洋平の股間。
『昨日さ、部活が終わってから、オレ、部室でウトウトしちゃったわけ。そしたらさ、夢の中でさ、オレの大切なところが食べられちゃってる夢を見たんだよねぇ!』
今朝の洋平のご機嫌な声が頭の中にリフレインする。
『あ〜あ。また、あんな気持ちいい夢、見られねぇかなぁ!』
思い出すだけで腹が立つやら、悲しいやら…。
「本当は、僕がやったんだぞ?」
そう思うと、涙が出て来た。
「…洋平が、…悪いんだぞ…?」
今日の僕は遠慮も抵抗もなかった。僕はそう言うと、洋平の股間部分へ近付いた。そして、その中心部分のふくよかな膨らみへ、ゆっくりと顔を沈めた。
ゆっくりと息を吸い込む。洋平の独特の匂いと、それに混じって塩素の匂いがする。
(…洋…平…)
僕の、鮮やかな黄色のイエローターボの股間部分は大きく前に迫り出し、その先端は光沢を失っていた。
「…ッ!?」
チラリと洋平の顔を見ようと視線をずらした途端、僕は思わずその場で固まった。
洋平が、無言のまま、じっと僕を見つめていたのだった。