ジグザグ青春ロード 第5話
(…最悪だ…!)
自分の部屋に入り、ベッドに腰掛ける僕。いや、ベッドに腰掛けているのは僕だけじゃなかった。
今、目の前にはニコニコと笑みを浮かべて座っている、一番会いたくないヤツ、洋平がいた。別に許可をしたわけでもないのに、強引に部屋に入り込んで来て、さっきまでムッとした顔付きだったのに、今はまるで子供のように物珍しそうに僕の部屋を見回していた。
(…でも…。…カッコいいんだよなぁ…)
そんな洋平の体をじっと眺めてしまう僕。
夏服の薄い白シャツから出た腕は日に焼け、程よく筋肉が付いている。肩なんてパンパンだし。そして、僕のベッドに座っている太腿は制服のズボンの中でパンパンに膨らみ、今にもズボンが破れそうな勢いだ。また、その太腿の膨らみが妙な感情を抱かせる。
「…ん?」
不意に洋平と目が合った。
「…んなッ、何だよッ!!」
僕は顔が火照っているのが分かった。相当、赤くなってるんだろうな。
すると、洋平はニヤリと意地悪い笑みを浮かべて、
「やぁだ、俊介君ったら。オレの体を舐めるように見てたな?」
と言った。
「んなッ!?」
図星を指されたとは言え、言い返すことが出来ない。
「…べッ、…別にッ!!…お前の体になんか、興味ないし…!」
本当はウソだ。洋平の体に触れたいと思ってる。洋平に抱きすくめられたいとさえ思ってる。すると、洋平は突然、
「…酷いッ!!」
と言って泣き真似を始めた。
「…よ、…洋…平…?」
今度はこっちが戸惑う番だった。
「オレの体を傷モノにしたくせにッ!!人の寝込みを襲ったくせにィッ!!」
「だああああッッッッ!!だからッ、それは悪かったってッ!!」
僕は思わず大声を上げた。顔は熱いし、早くこの場を切り抜けたかった。
「…もう、…あんなことは、…しないよ…」
半分、泣きそうだった。こんなことで、洋平との友情が終わってしまうなんて…。なんで、あんなことをしたんだろう?悔やむことだらけだ。
その時だった。洋平が、いつもと変わらない優しい笑みを浮かべていたんだ。
「やっぱり、病気ってのはウソだったんだな?」
「んなッ!?」
開いた口が塞がらないとはこのことだ。今、おどけていたかと思えば、すぐにこれだ。お調子者の洋平。そんなところにも惹かれてるんだけどな。
「それだけ大声を上げる元気があれば、大丈夫だよな?」
「…何だよ…!」
僕はもう、まともに洋平の顔を見られなくなっていた。涙が込み上げて来る。どうして、洋平は僕のことを責めないんだろう。
「いったい、何なんだよッ!!僕が、洋平に対して気持ち悪いことをしたんだぞッ!?僕が、洋平の寝込みを襲ってアソコを触ったり食べたりしたんだぞッ!?」
「…ふむ…」
洋平が考え込むような仕草をした。
「…確かに、それはセクハラだよな…?」
「…だから…ッ!!」
もう、頭の中がぐっちゃぐちゃ。何か、もう全てがどうでもよくなって来た。
「…だから、…もう、…二度としないよ…。…もう、…二度と…」
ターボレンジャーも辞めようかな。イエローターボとして、ブルーターボになった洋平の戦っている姿を見るのも好きだったのにな。
(…あれ?)
その時、ふと僕の頭の中に疑問が過ぎった。
「(…洋平のアソコを触っていた時、洋平、勃ってなかったか?)…ちょ、…ちょっと待て…!」
僕は洋平を睨み返す。
「ちょっと待て、洋平!僕が洋平のアソコを触っていた時、勃起してたよな!?」
「うん」
「うん、じゃないッ!!」
今度は荒い息をして、洋平の目の前に立っている僕。僕も忙しいなぁ…。
「まぁ、僕達、高校生と言えば、そんな年頃でもあるけどな!つーか、洋平は何を想像しながらするんだよッ!?」
「…は?」
今度は洋平がきょとんとしている。
「あ〜、分かったァ!」
僕は思わず意地悪な顔を見せた。
「はるなのことを考えながらするんだろ!?あ、もしかして、キリカとか?」
「はぁッ!?」
僕がピンクターボのはるなのことや、流れ暴魔として僕らと敵対しているキリカのことを口にした瞬間、洋平が物凄く嫌そうな声を上げた。
「お前さぁ、女ッたらしだし、スケベだし!だからはるなとかキリカのことを考えて、いつもしてんじゃねぇの!?」
最悪だった。どうして、僕はこんなことしか言えないんだろう…。
と、その時だった。洋平が僕の腕を掴んだ。そして、強い勢いで引っ張ったかと思うと、僕の体はベッドに押し倒され、その上に洋平がいた。
「…洋…平…?」
急に怖くなった。洋平の顔。いつもの優しい笑顔なんかじゃない。僕を睨み付けているような、悲しそうな、そんな瞳をしていた。
「…ごめん…。…洋平…」
ちょっと言い過ぎた。もう、完全に終わりだな。その時だった。
「…オレがする時、いつも想像しているのは、…お前だよ、俊介…」
洋平が言った。
「…え?」
暫しの沈黙の後、僕はようやく口にした。とその時、洋平の顔が近付いて来た。
(…あ…)
僕の唇に、洋平の温かい唇が触れていた。