ジグザグ青春ロード 第6話
(…ウソ…ッ!?)
僕の唇に、洋平の温かい唇が触れている。至近距離にいる洋平は静かに目を閉じ、僕にキスをしていたんだ!
僕は頭が真っ白。目をカッと見開いて、洋平の顔を見ている。まだまだ幼さの残る顔に、悔しいけど、端正な男前の、大人の顔が見え隠れする。そんなところに、女の子達は惹かれるんだろうな。
それは僕も同じだった。明るくてひょうきんで、時折、ニヒルで。そんな洋平に惹かれていた。
…はずだったのに。
「…オレがする時、いつも想像しているのは、…お前だよ、俊介…」
その洋平に、いきなり告白された僕。そして、次の瞬間、洋平にキスをされた僕。
「…ん…」
僕は思わず吐息を漏らす。すると今度は、洋平が僕の口を抉じ開けて無理矢理舌を入れて来たんだ。
「…んんッ!!」
これにはパニックになった。
「…ん…!!…んあ…ッ!!」
首を背けようとしても、洋平がガッシリと僕の頭を押さえ込んで逃げないようにしている。
…クチュッ!!…チュッ!!…クチュッ!!
くすぐったい音が僕の耳に聞こえる。とその時、不意に僕の口から洋平の口が離れたかと思った次の瞬間、
クチュクチュッ!!チュルッ!!
と洋平が僕の左耳を舐めて来たんだ。耳たぶやうなじだけじゃなく、耳の中にも舌を入れて来た。
「うわああああッッッッ!!!!」
さすがにこれには僕も悲鳴を上げた。力を振り絞って洋平をドンと突き飛ばした。
「…はぁ…、…はぁ…!!」
僕の顔が物凄く熱い。多分、真っ赤になってるんだろうな。それに対して、洋平は僕を冷静に見つめている。
「…や、…止めろよ…!!」
自分でも情けないほど、声が物凄く上ずって震えていた。すると洋平はニヤッと笑って、
「俊介を襲っちゃった♪」
なんて言う。その瞬間、僕の中でぷちんと何かが切れた。
「…ふ、…ふざけんなよッ!!…何が、『俊介を襲っちゃった♪』だよッ!!」
その時、洋平があっと言う顔をしていた。
僕の目から、涙が伝ったんだ。
「…何だよ…!」
僕はしゃくり上げながら言う。感情のコントロールが全く出来ない。
「…僕は、…洋平に憧れて…。…洋平といつも一緒にいられることが嬉しくて…。…洋平と一緒にターボレンジャーにもなれて…。…洋平が大好きだから、…あんなことして…。…それなのに、…洋平はふざけて…!!…冗談だったら、…止めてくれよ…。…辛いから…!」
洋平にキスされて嬉しいはずなのに、心のどこかが寂しくて、悲しくて…。
とその時だった。不意に洋平が僕の方へ膝立ちで向かって来たんだ。
「ひッ!!」
僕は思わず身構え、目をギュッと閉じた。その時、僕の体がふわっと浮いたような感じがして、気が付くと、僕は洋平の腕の中にすっぽりと抱き締められていた。
「…洋…平…?」
僕は洋平の腕の中から、洋平の顔を見ようとした。でも、洋平は物凄い力で僕の顔をギュッと押さえ込み、顔を見られないようにしている感じだ。
「…ごめん、…俊介…」
頭の上から洋平の声が聞こえた。
「…俊介が、…そんなに辛い思いをしていたなんて、オレ、全く気付かなかった。…悪ふざけが、…過ぎた…。…でもッ!!」
洋平はそう言うとゆっくりと僕から離れ、僕の両肩をグッと掴み、見つめ合ったんだ。
「オレは、俊介が好きだ!」
「!?」
僕の顔がまた熱くなった。
「…お、…お…、…おまッ…!!」
よくきっぱりと人の目を見て言えるやつだな!それも洋平なのかな。すると、洋平は優しい笑顔になって、
「…前にさ…」
と切り出した。
「ヤミマルが現れた頃、太宰博士が開発中だったVターボバズーカの前身の、Zバズーカを2人で持ち出したことがあったろ?」
「…あ?…あ、…あぁ…」
洋平が何を言いたいのか分からず、僕は曖昧に頷くしか出来なかった。
「その時にさ、『こいつでヤミマルを叩くしかない!』って言ったら、俊介、『うん』って頷いてくれたよな?オレ、あの時、わざと俊介に聞いたんだ」
「…なんで?」
すると洋平は、僕の頭の上にポンと手を乗せた。
「お前ならさ、きっと『うん』って言ってくれると思ったからさ!」
「…だって…」
いつの間にか、僕の口からは言葉が一人歩きしたように飛び出した。
「…だって…。…僕は、いつでも洋平の味方だよ。…洋平の思うようにやって欲しいし、…頑張る洋平を、…支えたいって、…思ったんだ…。…結果的に、大変なことになっちゃったけど…」
次の瞬間、僕は洋平に物凄い力で抱き締められていた。
「…く、苦しいよッ、洋平ッ!!」
僕を抱き締め、頭を撫でてくれる洋平。そんな洋平の背中に腕を伸ばし、僕もギュッと洋平に抱き付いた。
「…離れないぞ…?」
僕がそう言うと、
「…ああ。…離さない…!」
洋平が僕の耳元でそう言った。
「…もう、…戻れないぞ…?」
僕がそう言うと、
「…ああ。…もう、戻らない…!」
洋平がまた、僕の耳元でそう言ったのだった。