ジグザグ青春ロード 第7話

 

「行くぜッ!!

「コンビネーション・アタックッ!!

 今日も軽快に響く僕らの声。

「はあッ!!

 ブルーターボに変身した洋平がその長い脚を生かして暴魔獣に華麗にキックを決める。

「おおりゃあああッッッ!!

 そして、イエローターボに変身した僕がアクロバティックな動きでその暴魔獣の懐に入り込み、大ダメージを与える。

 洋平が僕の彼氏になった。もちろん、これは誰にも秘密。

 あの日――。

 洋平が、学校をズル休みした僕を訪ねて来てくれたあの日。僕らは、お互いがお互いを想っていたことを知った。その時、僕は今までのわだかまりがスゥッと消えて行ったかのように、洋平に対して思っていたことを全て伝えた。洋平も、僕の思いを知って、全てを受け入れてくれた。

 それからと言うもの、僕らが暴魔獣と戦う時は物凄く波長が合うのか、コンビネーションアタックも華麗に決まった。これには、レッドターボに変身している力も、ブラックターボに変身している大地も、ピンクターボに変身しているはるなも唖然とするほどだった。

「へへ〜んだ!!

 スタッと地面に着地すると、僕はマスク越しに鼻の辺りを擦った。

「やったな、俊介ッ!!

 洋平が傍までかけて来ると、僕らはハイタッチをした。

 

(…洋平が、…僕の、…彼氏…)

 朝、学校へ向かう時も、僕の頭の中は洋平のことでいっぱいだ。

「(洋平が、僕の、彼氏)…ヘヘッ…!!…こりゃ、参ったね…!!

 気付けば、ニヤニヤと笑っている僕がいた。

「よッ!!俊介ッ!!

 背後からポンと頭を叩かれ、僕は見上げる。

「おっはよッ!!

 肩を組んで来たのは洋平だった。

「…お、…おはよ…」

 洋平が頭を叩いてくれたり、肩を組んでくれたりしてスキンシップをしてくれるのに、いざとなると僕は斜に構えてしまう。

「何だ何だあ?元気ないなぁ!」

 すると、洋平が僕の両頬を両手で挟み、グイッと押す。

「なななッ、何しゅんだよぉッ!!

 突き出された口のせいで、まともに発音出来ない僕。そんな僕の口と真っ赤な顔はまるでタコのようだった。すると洋平はニヤッとして、

「オレの大好きな俊介君に元気がないから、ちょっとしたおまじない!」

 と言った瞬間、突き出された僕の口にチュッと口付けをして来たんだ。

「…んなッ!?

 驚くのは僕の方だった。すると洋平は更にニヤッとして、

「俊介の元気、もらっちゃった♪」

 と言ってぱっと手を放し、教室へ駆けて行く。

「…あ、…あんの野郎…ッ!!

 僕はブルブルと怒りに震えた後、大きく溜め息を吐いた。

 

 そして、教室――。

 相変わらず、洋平の周りは女の子がいっぱいだ。黄色い声が飛び交う飛び交う。

「…フッフッフ…!!

 自分の席に座り、僕は腕組みをしてそれを眺めていた。まさに、勝ち誇った顔とはこのことを言うのだろうと思うほど、僕は凄い顔をしていたと思う。

「…甘いな、チミたち…」

 僕はチッチと顔の前で右人差し指を立て、左右へ小さく振る。

「…洋平は、…僕のものなんだよねぇ…!」

 小さく呟く僕。

「…チミたちの知らない洋平を、僕はたぁっくさん知っているのだよ!」

 そうなのだ。だって、洋平も僕もターボレンジャーなのだから。ターボレンジャーになって華麗に戦う洋平の姿なんて、僕しか知らないわけだし。

「…それに…」

 次の瞬間、はたと立ち止まった僕は顔が真っ赤になった。

「…うあ…ッ!!

 思い出さなきゃ良かったことを思い出してしまったんだ。

 水泳部の部室で、競泳水着1枚で寝ていた洋平。そんな洋平の、男としての象徴…。

「…ヤベ…ッ!!

 その時、僕の制服のズボンの、下半身の中心部分に大きなテントが張っていることに気付いた。

「うわああああッッッッ!!!!

 僕は素っ頓狂な声を上げると席を立ち上がり、そこを包み込んだまま、腰を折り曲げるようにして物凄い勢いで教室を飛び出した。

 

「…ふぅ…!!

 気が付けば、僕は屋上にいた。

 夏の太陽は朝から暑い。照り付ける太陽の光が僕の顔にじんわりと汗を浮かばせていた。

「…あ〜、ヤバかったぁ…!」

 朝から何を想像してんだか。あのまま、教室にいたらとんでもないことになっていたな…。

「…はぁ…」

 空を見上げて、僕は溜め息を吐いた。

「…洋平…!!

 そっと呟いてみる。僕の目の前に、洋平の顔が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。

「…あぁ…!!

 僕は、自分の股間をそっと見た。相変わらず、真っ青な制服のズボンがテントを張っている。

(…やっぱり僕、洋平が好きなんだな…)

 その時だった。

「しゅ〜んすけッ!!

 屋上への入口から声が聞こえた。

「…んなッ!?

 僕の顔が更に真っ赤になった。そこには競泳水着1枚だけの、逞しい体付きの洋平が、腕を腰に当てて立っていたのだった。

 

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