ジグザグ青春ロード 第9話

 

「…あの〜、…洋平…君…?」

 見慣れた家。見慣れた部屋。それなのに、僕の隣りには何故か洋平がいた。

「はい?何ですか、俊介君?」

 ベッドの上で僕の隣りに座り、ニコニコとしている洋平。僕は懸命に込み上げるものを押さえながら、静かに洋平に尋ねた。

「…何で、…ここにいるんですか?」

「何でって、さっき、ちゃんと言ったろ?」

 ケロッとした表情で何を今更、こんなことを尋ねるんだと言う顔をして洋平が言った。

 

「…ふぅ…」

 学校の校門を出て、グイグイと腕を引っ張られながら、無理矢理、自宅まで戻って来た僕。そして、玄関の鍵を開けた時だった。

「たっだいまぁ〜!お邪魔しまぁ〜すッ!!

 今まで僕の腕をグイグイと引っ張っていた洋平が、家の鍵を開けた僕を押し退けるようにして真っ先に僕の家、洋平の家じゃなくて「僕の家」へ入って行く。

「ちょちょちょちょッ!!!!

 はっと我に返った僕は、傍若無人に僕の家に入ろうとする洋平の腕をグイッと引っ張った。

「どした、俊介?」

 ニヤニヤしながら僕に聞いて来る洋平。

 こいつ、絶対に分かってやってやがるッ!!

「…何で、僕より先に入ろうとしてるんだよッ!?…ここ、僕の家だぞ!?

「知ってるよ?」

「だったら、何でッ!?

 頭に血が上りそうになる。時々、洋平が何を考えているのか、分からないことがある。すると洋平は、

「さっきも言ったろ?元気のない俊介君を独りにすることなんて出来ないし、今日はお前の傍にいてやりたいって思ったからだよ。…あ、それにィ!」

 と言い、ニヤリとしたかと思うと、

「オレのものはオレのもの。お前のものもオレのもの!」

 とぬかしやがった。

「ジャ○アンか、お前はッ!!

 僕はそう言うと、洋平の尻を学生服の上から思い切り蹴飛ばしてやった。

 

 で、今、僕と洋平は僕の部屋にいるんだけど…。

「…」

 僕は声を出すことも出来ず、ただ、ベッドの上に腰を下ろし、制服のズボンをギュッと握ることしか出来ずにいた。

「どしたんだよぉ、俊介ぇ?」

 ニヤニヤしながら僕を見つめる洋平。

「…く…ッ!!

 僕の顔は真っ赤になっているはず。凄く火照っているのが分かる。悔しいけど、僕の心の中は洋平に見透かされている。

 その時だった。

 洋平が僕の左肩に腕を回し、ギュッと掴んだんだ。

「…よ、…洋平…ッ!?

 驚いて顔を上げた瞬間、洋平の唇が僕の唇に重なった。

「…ん…」

 唇を合わせるだけの静かなキス。ほんのちょっとだけだったが、それが僕には物凄く長く感じられた。

 ゆっくりと洋平の顔が離れて行く。その時、僕の心はドキンと高鳴った。

「…よ、…洋…平…?」

 今まで見たことのなかった、洋平の悲しげな表情。暫く僕をじっと見つめていたかと思うと、

「…オレの、…せい…?」

 と聞いて来た。

(そんな顔で聞くなよ…!)

 まるで僕が悪いみたいな気持ちになる。

「…オレが、…俊介を、…苦しめてる…?」

 その瞬間、僕は洋平に抱き付いた。

「うわッ!」

 バランスを失った洋平がベッドの上に倒れ込む。僕はその勢いに任せて、洋平の胸に顔を埋めた。

「…俊…介…?」

 戸惑い気味に洋平が僕の名前を呼び、僕の頭をそっと撫でる。

「…酷いよ、…洋平…!!

 僕は洋平のシャツをギュッと握り、ブルブルと拳を震わせていた。怒りで震えているんじゃない。物凄く緊張していたんだ。心臓はドキドキと高鳴り、顔は火照り、汗が噴き出していた。

「…僕の気持ちを知っていながら、…いつまでも僕を振り回して…!…僕に、…意地悪ばっかりして…!!

 僕はそれだけ言うと、洋平の顔を見上げた。

「好きなんだよッ!!…洋平が…ッ!!…ずっと、…ずっとッ!!

 その時だった。洋平が僕の両腕をグッと掴んだかと思うと、物凄い勢いで僕を引き上げた。

 洋平の腕のどこにこんな力が、と思う間もなく、僕の顔は洋平の顔と同じ位置にあった。そして、洋平の右手が僕の頭をしっかり抱え込んだかと思うと、瞬く間に抱き寄せられ、再び僕の唇と洋平の唇が重なり合った。

「…ん…ッ!!…んん…ッ!!

 突然のことに僕は呻くしか出来ない。そうこうしているうちに、僕の口の中へ、洋平の舌が容赦なく入り込んで来た。

 …チュッ!!…クチュッ…!!

 くすぐったい音が僕の部屋に響く。同時に、

「…ん…、…はぁ…ッ!!

「…あ、…あぁ…!!

 と言う僕と洋平の淫らな息遣いも。そして。

 僕の下半身に何か固いものがぶつかるのを感じた。それを感じ取った時、僕の体はカァッと熱くなり、僕の下半身もドクンドクンと疼き始めたんだ。

「…はぁ…、…はぁ…!」

「…はぁ…、…はぁ…!」

 僕も洋平も荒い息をしている。僕と同じように、洋平の瞳も潤み、顔を真っ赤にしている。とその時、洋平の体がグイッと起き上がったかと思うと、ゴロンと僕を押し倒し、僕が下、洋平が上になった。

「…俊介…」

 洋平が僕を呼ぶ。そして、お互いの腕を引き寄せ、お互いの腕に付けられているターボブレスを器用に同時操作した。

 その瞬間、僕と洋平の体が光り、僕はイエローターボに、洋平はブルーターボに変身していたのだった。

 

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