最後の恋 第4話
僕の大地君への想いは日増しに大きくなって行く。好きだと言う気持ち、そして、それに対して2回りも年齢差がある若い子の人生を狂わせてはいけないと言う気持ち。その相反する気持ちに、僕の心は毎日悶々としていた。
いつものように喫茶店へ行き、落ち着いた雰囲気の中でコーヒーを飲みながら、体を休める。暇を見ては大地君が僕のところへ寄って来て、いろいろ話してくれる。それだけで十分だったし、気持ちも落ち着いていた。
だが、運命の女神はそんな僕に更なるイタズラを仕掛けて来た。
「…ふぅぅ…」
ある朝、いつものように通勤電車に揺られていた。僕が使う鉄道の路線は、ラッシュの時間帯は車内がぎゅうぎゅう詰めになる。
(…ううう…!!)
正直、僕はこの通勤ラッシュが苦手だった。車内は人の体温で室温が上昇し、気分が悪くなることもある。おまけに駅に着くたびに、乗れそうにもないのに無理に乗って来ようとする人もいる。それも相まって、車内の室温が更に上昇する。それだから、電車の発車時刻は遅れるわ、気分が悪くなる人が続出し、車内救護と称して列車が暫くその駅で停まるわ…。
(よくもまぁ、これだけの人が乗るものだ…)
僕はいつも、だいたい車両と車両の連結部分に立っていたりする。座れることなんてほとんどない。
「…はぁぁぁ…」
大きな溜め息を吐いたその時だった。
とある駅に到着し、ドアが開く。そして、多くの人が降り、それと同じかそれ以上の人数の人がドドドッと乗って来た。
その時だった。
「…あ…」
不意に聞き慣れた声が聞こえた。
「…だ、…大地君…!?」
見上げると、そこには驚いた表情を浮かべている大地君が立っていたのだ。でも、大地君はすぐにいつもの爽やかな眩しい笑顔を浮かべ、
「おはようございます!!」
と言った。
「…お、…おはよう…」
僕の心臓がドキドキと高鳴っている。
「偶然ですね、こんなところで会うなんて!!」
大地君がニコニコとしながら言う。
「いつもこの電車ですか?」
「…うん。そうだよ」
いつまでもドギマギしていたら大地君に怪しまれる!僕は努めて普通に接した。
「大地君は、大学?」
僕がそう尋ねると、大地君はニコッとして、
「はい!で、授業が終わったら、いつもの喫茶店です!!」
と言った。
「そっかぁ。じゃあ、今日も行かないとね」
そう言うと、大地君は、
「お待ちしてます!!」
と、更に笑顔を見せた。
「それにしても、よく混みますね…」
大地君がうんざり気味に言う。
「そうだねぇ。これだけの人が都心の周りに住んでいる、ってことだね」
「そうですねぇ…」
その時、電車は大地君が乗って来た駅の次の駅に着いた。そして、ドアが開き、多くの人が降りた次の瞬間、更に多くの人が乗って来た。
「うおッ!?」
「英浩さんッ!!」
多くの人が乗って来たせいで、僕達はグイグイと奥の方へ押しやられた。そして、僕は車両の連結部分、ドアに背中をぶつけるような格好になった。そして、
ドンッ!!
と言う音と共に、僕の目の前に大地君が立っていた。
「…か、…壁ドン…」
「すッ、すみませんッ!!」
僕の左側に、大地君の右腕がグッと伸びている。
「だ、大丈夫ですか?」
顔を真っ赤にして僕を見つめる大地君。その顔に吸い込まれそうになる。
「…だ、…大丈…夫…」
至近距離に大地君の顔。顔だけじゃなく、その息遣いまで聞こえて来る。次に押されたら、確実に大地君と密着する。そんな距離だった。
その時だった。
僕の右手。だらんと下げているその手のひらに、柔らかいものが当たっている。
(…え?)
何となく、嫌な予感がした。
「…大地…君…?」
大地君の顔が真っ赤になっている。そして、ちょっと困ったような笑顔を見せていた。
「…ひ、…英浩…、…さん…」
「…ッッッッ!!!?」
グレーのスウェットズボンを穿いている大地君。その2本の足の付け根部分に息づく、大地君の男としての象徴・ペニス。それが、外へ向けられた僕の右手のひらの中にすっぽりと包まれるような格好になっていたのだ。
「ごッ、ごめんッ!!」
「…い、…いえ…、…大丈夫…です…」
そう言った大地君が腰をグッと引こうとしても、それが出来ないほどの満員具合。
「…あ…」
その時だった。
大地君のそこに異変が起こり始めた。
「…大地…、…君…?」
「…ッ!!」
顔を真っ赤にし、僕を見つめている大地君。そんな大地君の男としての象徴であるペニスに少しずつ芯が入り始める。
「…ふ…ッ、…んん…ッ!!」
困ったような、でも、どうすることも出来ないでいる大地君。
「…」
その時、僕の心の中はおぞましい感情がグルグルと渦巻いていた。そして、僕の指がピクッと動いたその時だった。
「んッ!!」
大地君が呻き、ピクリと体を跳ねらせた。
「…英…浩…、…さん…ッ!?」
それでも、僕は指を動かす。
「…あ…ッ!!」
「…く…ッ!!」
僕にしか聞こえないような小さな声で、顔を真っ赤にして呻く大地君。その喉が大きく動いたのが分かった。そして、僕の手のひらの中にすっぽりと収まっている大地君の男としての象徴はその大きさを変え、グレーのスウェットズボンの中で熱を帯びていた。
「…」
僕は無言のまま、大地君の大きく勃起したペニスをそっと握る。その途端、
「…ッ!!」
と、大地君はピクッと体を跳ねらせる。そして、僕は大地君のそれをゆっくりと上下にゆるゆると刺激し始めた。
「…あ…ッ!!…あ…ッ!!」
顔を真っ赤にし、目をギュッと閉じて懸命にその刺激を堪える大地君。
「…英…、…浩…、…さん…ッ!!」
顔が上気し、少しだけ開いた目は潤んでいる。
その時だった。
更に次の駅に到着し、多くの人が降りた。そして、僕と大地君との間に隙間が出来た。僕の手も、大地君のそこから離れる。
「…ごめん…」
力なく言う僕。すると大地君はニコッと微笑み、
「…い、…いえ…」
と言うと、僕の耳元に顔を寄せた。そして、
「…気持ち良かった…、…です…」
と言うと、肩にかけていたリュックを持ち直し、
「じゃあ、また今日、待ってますね!!」
と、いつもの笑顔で言って電車を降りて行った。
僕は暫く、その場を動くことが出来ずにいた。