最後の恋 第13話
僕と大地君がお互いの気持ちを伝え合い、付き合うことになってから初めての週末がやって来た。
「…う、…うううう…ッッッッ!!!!」
その日、僕は朝から滅茶苦茶、緊張していた。普段、仕事に出かけて、帰って寝るだけの生活のこじんまりとしたワンルーム。誰も泊めたことがない部屋に大地君を泊めることになったのだ。
「バイトが終わったら速攻で行きますねッ!!」
目を輝かせて嬉しそうに言った大地君。そのキラキラとした瞳が本当に眩しくて…。
(こんな僕なんかでいいのかな?)
今だに信じられない。大地君のご両親ほどの年齢の、しがない中年のおっさんと付き合ってくれるなんて…。いやいや、それよりも、大地君は男性と付き合ったことがない子だ。ましてや、女の子とも付き合ったこともないかもしれない。それはつまり、大地君の童貞を僕が奪うことになるのかもしれないし、そもそも大地君と同じ男性と付き合うことになるなんて。
(…責任…、…重大だな…)
部屋の掃除をしながら、僕の口元はにやけていた。
大地君が部屋にやって来るのは夕方。それまでに僕は部屋の掃除、ゴミ出し、晩御飯の買い物を済ませる。そこまで高給取りではないので、晩御飯も豪華なものではない。でも大地君は、
「普段、英浩さんが作っている料理を食べてみたいです!!」
と、目を輝かせて言ったんだ。
それならと、僕はいつもと同じバランスの取れた料理を作ることにした。メインはお肉かお魚。今日はお肉にした。それに副菜が数種類、そして、味噌汁。
「あはッ!!おふくろの味ってやつですねッ!!」
大地君を初めて家に入れた日、大地君はそう言って喜んでくれた。
(…やっぱり、誰かと一緒に食べるご飯は美味しいよな…)
そんなことを考えてしまう。それが、好きな人とだったら尚更のことだ。
「…と、いかんいかん!!」
大地君が部屋にやって来るのは午後5時過ぎ。今は午後3時。
「そろそろ用意しようかな」
独り言を言うと、僕は台所に向かった。
「…う、…うううう…ッッッッ!!!!」
僕の心臓がドキドキと高鳴っている。大地君がそろそろ来る、そう考えるだけで、僕の心臓が大きく高鳴り、大地君が来る1時間も前からソワソワしっぱなしだった。
(…今夜も、この間のように…。…いや、それ以上に今夜は大地君と…)
そう考えるだけで、僕のアソコは熱を帯びていた。
ピンポーン!
午後5時ちょっと過ぎ、部屋のインターフォンが鳴った。
「はぁい」
その音にドキッとしながらも、僕は玄関の扉を開ける。
「どもッ!!」
大地君はニコニコと微笑みながら僕を見つめている。いつもの白いシャツに黒いジーパン姿だ。
「英浩さんに早く会いたくて、物凄い勢いで自転車を飛ばして来ましたよ!!」
よく見れば、大地君の額には汗が滲んでいる。
「ただでさえ暑いのに、そんなに飛ばして来たら…」
そう言って僕は部屋の方へ向きを変えたその時だった。突然、肩を掴まれたかと思うと、体は再び大地君の方を向いていた。
「…え?」
声を上げる間もなく、僕は大地君に抱き締められていた。
「…だ…、…大地…君…?」
僕より長身の大地君の逞しい両腕にすっぽりと包まれるようになっている僕。その汗が滲んだ体からは大地君の匂いがしていた。
「…ずっと…、…こうしたかった…」
僕の耳元で言う大地君。
「…英浩さんと両想いになれて…。…喫茶店では毎日会うことが出来たけど、こうやって触れ合うことは出来なかった。…だから…、…オレ…!!」
その時、僕は足に硬いものが当たっているのが分かった。
「…フフッ!!」
思わず苦笑。と言うか、それだけで、僕も興奮状態だった。
「…大地君、素直だね」
そう言うと、僕は大地君のガッシリとした2本の足の付け根部分に息づく、大地君の男としての象徴であるペニスを優しく握った。すると大地君は、
「んくッ!!」
と、ビクリと体を痙攣させながらも、
「…ヘヘッ!!」
と笑った。
「大地君くらいの年齢だと、毎日オナニーしてるでしょ?」
僕が尋ねると、
「…実は…」
と言いながら、ポリポリと頭を掻く大地君。
「特に、英浩さんと付き合うようになってからはもう、狂ったように…」
「そんなに?」
驚いて尋ねると、大地君は、
「そりゃあ、もう。英浩さんのことを想いながら…」
と言いながら、右手を握るようにし、上下に物凄い勢いで振り始めた。
「おいおい、ターボレンジャーがそんな変態でいいの?」
そう言いながらも、僕は大地君の硬くなったそれを何度も何度も握る。すると大地君は、
「やッ、ヤバいですって!!そんなことされたら…!!…あッ!!あッ!!」
と顔を赤らめ、短い喘ぎ声を上げながら腰を引く。
「フフッ!!」
僕もジーパンの前の部分を大きく盛り上げながら、大地君に凭れ掛かると、
「…今夜、たぁっぷりといじめてあげるよ…!!」
と言うと、大地君のペニスを握っていた手を離した。その途端、
「あんッ!!」
と大地君が声を上げ、体をビクリと跳ねらせる。そして、
「…ひッ、…英浩さぁん…!!」
と泣きそうな顔をした。
そうなんだ。僕の心の中には、大地君を、ブラックターボを陵辱すると言うおぞましい感情がぐるぐると渦巻いていた。
それから大地君はシャワーを浴び、着替えを済ませた。
「…ふぅぅ…!!」
大きく息をして浴室から出て来た大地君。真っ白な半袖シャツとグレーのスウェットズボンだ。
「やっぱり、こっちの方が楽でいいや!!」
ニコニコしながら言う大地君。
「…?…英浩さん?」
その姿に、僕は見惚れていた。
今も体を鍛えているのだろうか。薄い半袖シャツから見える大地君の筋肉質な腕と割れた腹筋。
(…若いっていいなぁ…)
若さ全開。ブラックターボだったと言うのもあり、体はそれなりに出来上がっていた。
「ぼッ、僕ッ、晩御飯の用意をして来るッ!!」
ベッドの上に座っていた僕。これ以上はヤバいと思い、物凄い勢いで立ち上がると、台所へ向かおうとした。
「あー?」
大地君が悪戯っぽく笑っている。
「…なッ、…何だよ…ッ!?」
思わずぶっきらぼうになる僕。
「…英浩さん…。…今、エッチな目でオレを見てたでしょう?」
ニヤニヤと笑う大地君。
「…ばッ、…馬鹿言え…!!」
…いえ、…嘘です。僕は大地君をそう言う目で見てました。
「とッ、とにかくッ、晩御飯の用意をして来るからッ!!」
そう言い捨てると、僕は物凄い勢いで台所へ向かっていた。