力、絶体絶命! 第3話

 

 ドクンッ!!

 力の心臓が大きく高鳴った。

「…え…?」

 目の前の大きな革製の椅子に深々と腰かけている万里小路。その冷たいイメージのフレームのメガネの奥の瞳がギラリと輝いた。

「…お前…。…ターボレンジャー…、…レッドターボ…、…なんだろ…?」

 その言葉に、力は一瞬、意識を失いそうになった。

(…バレた…!!

 ドクンッ!!ドクンッ!!

 誰にも知られていないはずだった。変身する時も、物凄く注意して変身していたはずなのに。それだけじゃない。ターボレンジャーであること、レッドターボであると言うことがバレると言うことは、暴魔百族がこの武蔵野学園高校にもやって来るかもしれないと言うことを意味していた。

 いや、それよりも!

 今は、自身がレッドターボであることを隠し通さなければならない。特に、目の前にいる最低で卑怯者の生徒会長には…!!

「…は?」

 その声が物凄く上ずっていたのが分かった。

「…な、…何…言って…?」

「…ふむ…」

 万里小路はギラリと光るメガネをクイッと上げると、

「…答えない…か…」

 と言うと、ビデオカメラを持ち、力のもとへ近付いて来た。そして、

「…これ…、…お前…だよな…?…いや、お前だけじゃない。…お前のクラスの連中もそうだよな?」

 と言うと、画面に映し出された映像の横三角のボタンを押した。

『行くぞッ、みんなッ!!

『ターボレンジャーッ!!

 画面の中の力、大地、洋平、俊介、そしてはるなが叫んだ時、全員の体が眩い光に包まれた。そして、光沢のある鮮やかな赤、黒、青、黄色、ピンクのスーツを身に纏っていた。力はレッドターボ、大地はブラックターボ、洋平はブルーターボ、俊介はイエローターボ、そして、はるなはピンクターボにそれぞれ変身していた。

「行くぞオオオオッッッッ!!!!

 キラキラと輝くGTソートを手に持ち、襲い来る暴魔百族を次々に叩き切る力。そして、

「GTクラアアアアアアアアッシュッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と叫んだかと思うと、銀色に輝く剣が目の前の暴魔獣に振り下ろされた。

「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 その暴魔獣が甲高い悲鳴を上げたかと思うと、

 ズババババッッッッ!!!!バアアアアンンンンッッッッ!!!!バアアアアンンンンッッッッ!!!!

 と言う物凄い衝撃音と共に、体のあちこちから爆発が起こる。そして、その暴魔獣は無言のまま、地面に倒れたかと思うと、

 ドオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンンンンンンンンンッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 と言う爆発音と共に、その体が辺りに爆散したのだった。

『ビクトリイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!

 力達は右手を大きく突き出し、Vサインを決めていた。

 

 映像はそこで途切れていた。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 最早、言い逃れは出来なかった。力の顔だけではなく、武蔵野学園高校の学生服もクッキリと映り、その体に光沢のある鮮やかな赤いスーツが纏わり付いて行くところも撮られていた。

「…もう一度聞く…」

 万里小路がフンと鼻で笑い、静かに言った。

「…これ…、…お前…だよな…?」

「…ッッッッ!!!!

 顔を真っ赤にし、ギリギリと拳を握り締める。

「…そうか…。…答えないか…」

 万里小路はそう言うと、

「…じゃあ、来年度の野球部の予算はなしでいいな?…いや、野球部だけじゃない。…陸上部に、水泳部、体操部、そしてバトントワリング部もだ!!

 と言い出したのだ。

「なッ、何でそうなるんだよッ!?

 思わず声を荒げる。だが万里小路は、

「…言ったはずだ…。…俺の言うことは絶対だ…、…と…!!

 と、凍えるような冷たさの声で言ったのだ。

「…く…っそ…オオオオオオオオ…ッッッッッッッッ!!!!!!!!

 顔を真っ赤にし、目をギュッと閉じてブルブルと震える力。

「…もう一度聞く…」

 万里小路の声が聞こえて来る。

「…これは…。…レッドターボは…、…お前…だよな…?」

「…ああ…」

 コクンと頷く力。だが次の瞬間、

「だが、頼むッ!!このことは誰にも知られてはいけないんだッ!!だからッ、オレとお前だけの秘密にしておいてくれないか?」

 と言った。

 この言葉が、力を絶望のどん底へ突き落した。

「…秘密…?」

 万里小路が言う。

「ああッ!!さっきも言ったが、このことは絶対に知られてはいけないことなんだッ!!オレ達がターボレンジャーだって暴魔百族にバレたら、あいつらはどんな手を使って来るか分からない。それこそ、お前達を危険に巻き込むようなことになってしまうかもしれないんだッ!!だからッ、黙っていてくれ…!!

「…ふむ…」

 万里小路はゆっくりと歩き、デスクにビデオカメラを置いた。そして、

「…いいだろう…」

 と言ったのだ。

「…いいだろう…。…誰にも言わないでおこう…」

「…ほッ、…本当か…ッ!?

 力の顔に一瞬、安どの表情が浮かぶ。

「ただし、条件がある」

「…え?」

 条件、と聞いて、力は一瞬、嫌な予感が頭を過ぎった。

「…さっきも言ったが…」

 そう言った万里小路が、再びゆっくりと力に近付いて来る。

「…な、…何だよ…!?

 力の周りを回るようにゆっくりと歩く万里小路。その視線が妖しく動いていることに、力は気付かないでいた。

「…お前の体を借りたいんだがね…」

「…俺の…、…体…?」

 だが、その時も、力にはその真意がはかりかねていた。

「…何か、…手伝って欲しいことがあるのか?」

「…フッ!!

 万里小路は鼻で笑うと、

「…俺が言った意味、本当に分かってないんだな…」

 と言いながら、力の背後から両腕をリュウの体の前へ回す。そして、野球部の真っ白なユニフォームに包まれた力の体を撫でるようにその両手を動かし始めたのだ。

「…な、…何…だよ…!?

 ゾワゾワと悪寒が力を包み込む。

「…オ、…オレ…、…そんな趣味…、…ないんだけど…」

「趣味?何のことだ?」

 万里小路の両腕が力の腹部からゆっくりと下へ下りて行く。

「…え?…え?」

 次の瞬間、万里小路の右手がさっと動いたかと思うと、

「んあッ!?

 と、力が素っ頓狂な声を上げ、体をビクリと跳ねらせた。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 力のガッシリとした2本の足の付け根部分。そこに形成されているふくよかな膨らみ。力の男としての象徴・ペニスとその下に息づく2つの球体。万里小路の右手は、それを優しく包み込んでいたのだった。

 

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