力、絶体絶命! 第4話
「…あ…あ…あ…あ…!!」
顔から火が出るほどに熱い。背後にいる人間に抱きすくめられ、前へと両腕を回されている。それだけならまだしも、その右手は力の大事な部分、2本の足の付け根部分に息づく、力の男としての象徴であるペニスを眩しいくらいに真っ白な野球ユニフォームのズボンの上から包み込んでいた。
「…ほう…」
後ろの男・万里小路が低い声を上げる。
「…力…。…お前のチンポ、普段からデカいんだな…」
「あッ!!んあッ!!」
その手が力のペニスの下に息づく2つの球体をコリコリと擦り合わせ始めた。
「…ぐ…ッ!!…うううう…ッッッッ!!!!」
その動きがやや強く、時折、男にしか分からない鈍い痛みが力を襲う。
「…フフッ!!…力ぃ…。…お前のタマも随分とふてぶてしいんだな。普段からこんなに大きくては、野球のユニフォーム越しにそのふくらみが分かってしまうんじゃないのか?それこそ、好奇の目で見られてしまう。だが、これが大きくなったら、どのくらいの大きさになるんだろうなぁ…?」
その時、万里小路の右手が力のそこ全体をやわやわと揉み始めたのだ。
「…ッッッッ!!!!」
ゾワゾワとした悪寒が力の体を包み込み、次の瞬間、
「止めろオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と、力が大声を上げたかと思うと、背後にいた万里小路を思い切り突き飛ばしていた。
ドンッ!!ガラガラ…ッッッッ!!!!
激しい衝撃音と共に、万里小路の体が吹き飛び、生徒会室の隅へ突き飛ばされていた。
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
顔を真っ赤にし、物凄い形相で万里小路を睨み付ける力。
「…なッ、…何やってんだよッ、変態ッ!!…オレにはッ、…そんな趣味はないッ!!」
「…」
顔を真っ赤にして怒鳴る力に対し、万里小路はゆっくりと起き上がると、冷たいイメージのフレームの眼鏡の奥から力を睨み付けた。
「…ッッッッ!!!!」
その瞳に、力はゾクッと寒気が走る。それだけではなく、
「…あ…あ…あ…あ…!!」
と、声を震わせ始めたのだ。
「…ようやく、事の重大さが分かったか…」
その視線は氷のように冷たく、力自身をも凍り付かせるほどだった。
「…す、…すまん…」
そう言うのが精一杯だった。だが万里小路は、
「…予算…」
と、あくまでも力を追い詰めることをちらつかせる。
「…予算…、…なしでいいな…?」
「…そッ、それだけは…ッ!!」
「だったら、これにどうけじめを付けると言うんだ!?」
その声に力は驚いていた。
万里小路の声がいつもより大きく感じられた。そんな声も出せたんだ、と言うのが正直なところだった。
「…俺は体中をぶつけた!!痛くて痛くて堪らないッ!!お前に暴行された、と言えば、それで野球部は終わりだッ!!いや、それだけじゃないッ!!正義のヒーロー・ターボレンジャーのレッドターボは、本当は庶民にも手を出す卑劣極まりない男でした、とマスコミにでも言いふらしてやろうか…!?」
「だッ、だからッ、悪かったって…」
その時だった。
万里小路が物凄い勢いで動いたかと思うと、力が気が付いた時には力の至近距離にいた。そして、その右手が再び伸びた時、
「…うぐ…ッ!?」
と、力は腰を思わず引いていた。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
その目がカッと見開かれ、顔面が蒼白になって行く。
「…んぐ…ッ、…ぐ…うううう…ッッッッ!!!!」
男にしか分からない鈍い痛み。それが急速に強くなって行く。
「…や…、…め…ろ…!!」
万里小路の右手。細く、ガリガリに痩せているこの右手のどこにそんな力があるのだと言いたくなるほど、力のペニスとその下に息づく2つの球体が物凄い力で握られていた。
「…あ…ッ、…ぁぁぁぁ…ッッッッ!!!!」
顔が真っ青になる。そして、
「…ぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、体を仰け反らせて絶叫し始めたのだ。
「痛ってええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
力のペニスとその下に息づく2つの球体がギリギリと握られて行く。その2つの球体はそんな苦痛から逃れようと限られた大きさの袋の中で必死に逃げ惑う。だが、そうはさせまいと万里小路の指がその2つを確実に捕らえ、これ以上にないほどの傷みを与えて来る。
「止めろオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!止めてくれええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「なら、俺の言うことを何でも聞くか!?」
「…聞く…ッ!!…聞く…から…ッ!!」
「…フン…ッ!!」
その時だった。
「…ッ!?…がは…ッ!!…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
力のその部分から万里小路の右手が離れ、ふっと体が軽くなったような感覚がした。次の瞬間、力はその場にドサッと言う音を立てて崩れ落ちていた。
「…ぐ…ッ、…うううう…ッッッッ!!!!」
両手でその部分を押さえ、呻き声を上げるリュウ。その顔色は真っ赤から赤紫に変わり、脂汗が大量に滲んでいた。
「…素直に俺にされるがままになっていれば、…こんな苦痛を味わうことはなかったのに…」
その時、万里小路は背後から力に覆い被さるように体の上に伸し掛かった。
「…お…、…お…ま…、…え…ッ!!」
怒りが力の体を震えさせる。ワナワナと震える拳がギリギリと音を立てた。
「…ほう…。…まだ、逆らうつもりか…?」
「…ッッッッ!!!?」
冷たいイメージのフレームの眼鏡の奥から見える万里小路の瞳。至近距離にあるその瞳に睨まれ、力はその場で固まる。
「…さぁ、…立てよ…」
万里小路の低い声が響く。
「…く…ッ!!」
力はゆっくりと立ち上がると、万里小路と向き合った。
「…言っただろう…?…お前の体を借りたい…、…と…」
万里小路がニヤリと笑う。
「…ま、…まさ…か…!?」
目を見開き、呆然と万里小路を見つめる力。すると、万里小路は更にニヤリと笑い、
「…そうだ…。…俺が言った、お前の体を借りたい、とは、お前の体を俺の気が済むようにする、と言うことだ…!!」
と冷たく言った。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
瞬時にして顔を真っ赤にする力。だが、全てが遅すぎた。
「…俺を突き飛ばした代償は高く付くぞ?」
冷たいイメージのフレームの眼鏡の奥の瞳をギラギラさせて、万里小路がゆっくりと力の方へ向かって歩いて来る。
「…止めろ…!!…止めてくれ…!!」
その時、力の声が思わず震えていたのだった。