力、絶体絶命! 第8話
「…う…、…んん…」
少しずつ、目の前がはっきりとして来る。
「…ここ…は…、…どこ…だ…?」
ぼんやりとした意識の中で、力は自分がどこかに寝かされていることに気付いた。まず、最初に目に飛び込んで来たのは天井とそこに取り付けられた蛍光灯だった。その蛍光灯は点灯していない。だが、部屋は薄暗い。
「…夕方…、…か…」
どのくらい意識を失っていたのだろうか。不気味な存在の生徒会長・万里小路に呼び出されたのが午後3時過ぎだったのを覚えている。他の学生達の声も、いつの間にか、あまり聞かれなくなっていた。
「…う…ッ、…うああああ…ッッッッ!!!!」
その途端、力の中であの忌まわしい、おぞましい記憶が蘇って来た。
「…オレは…ッ!!…オレは…ッ!!」
カタカタカタカタ…。
「…オレは…ッ!!…万里小路に…ッ!!」
カタカタカタカタ…。
「…あの下衆な野郎に…ッ!!…オレの大事なところを…、…触られて…ッ!!」
「…いや、触っただけではないのだがな…」
「…ッッッッ!!!?」
その瞬間、力の顔が恐怖に歪み、
「うぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、上ずった声で悲鳴を上げていた。と同時に、
ガタガタガタガタ…ッッッッ!!!!
と言う音が聞こえ、
「…え?」
と、一瞬、呆然となった。だがその瞬間、
「…なッ、…何だよッ、これッ!?」
と、驚いて周りを見回したのだ。
力の置かれていた状況。ベッドのようなところに両手を肩の位置で真横に、そして、両足は大きく広げられて拘束されていた。さっきからのカタカタ、ガタガタと言う音は力の両手両足を繋ぐ鎖が乾いた金属音を立てていたのだった。
「…そッ、…それにッ、レッドターボに変身してる…!?」
レッドターボの光沢のある鮮やかな赤色のスーツに包まれた力。だが、その頭にはマスクはなかった。
「やれやれ、ようやく自分が置かれた状況に気付いたのか…」
そんな力の横から万里小路がムクリと起き上がった。相変わらず、冷たいイメージのフレームの眼鏡の奥から冷ややかな視線を力に投げ掛けている。
「…なッ、…何でッ!?」
「何で変身しているのか、か?」
フンと万里小路が鼻で笑う。
「簡単なことだ。お前が映っていたあの映像をじっくりと見れば、どうやってお前達がターボレンジャーに変身しているのか、すぐに分かるからな。そして、お前が気を失っている間に、俺がこのターボブレスを操作し、お前はレッドターボに変身した、と言うわけだ」
「…貴…様…ああああ…ッッッッ!!!!」
だが、どう足掻いても両手両足を拘束している鎖は外れない。すると万里小路は、
「…力ぃ…。…お前、…本当に淫乱だな…」
と言ったのだ。
「何がッ!?」
思わず怒鳴る力。
無理もない。光沢のある鮮やかな赤色のスーツが蛍光灯の光に照らされ、力の体付きをクッキリと浮かび上がらせている。それは、赤色と言う色のせいなのか、妙に淫猥に照り輝いて見えた。
その時だった。
「…お前、本当はバカだろ?」
突然、万里小路がそう言った。
「…な…ッ!!」
その瞬間、力はカチンと来た。
「…ちッ、…違うッ!!…オッ、…オレは寝呆けてたから、自分の状況に気付いてなかっただけだ…!!」
思わず顔を真っ赤にして怒鳴ると、万里小路は眼鏡のフレームを鼻のところでクイッと上げ、
「…まぁ、どちらでもいいが」
と言ったかと思うと、あの不気味な笑顔を見せ、
「…それにしても、お前との添い寝は凄く良かったぞ…!!」
と言い出したのだ。
「…な…ッ!?」
その途端、力の体にゾワゾワとした悪寒が走る。
「…お前の体、物凄く温かいんだな。お前が意識を失っている間、俺はお前の体をずっと触っていた。腕も、太腿も、そのガッシリとした胸も。…そして…」
「止めろオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
思わず叫んでいた。
「…なッ、…なあ…ッ、…万里小路…」
どっと疲れが出て、力はさっきまでの勢いはどこへやら、万里小路へ話しかける。
「…お前…。…こんなことして、何が楽しいんだよ…?」
「…決まってるだろう?」
万里小路は再び力の横に添い寝するように寝そべる。そして、力のガッシリとした体をゆっくりと撫でながら、
「…お前を…、…俺の玩具にするのさ…」
と言った。
「…そのためには、…まず、たぁっぷりと調教してやらないとな…」
そう言いながら、万里小路はレッドターボのスーツ越しに、力の体を撫で続ける。その手が、力の筋肉質な胸の辺りを執拗に撫で続ける。そのたびに力は、
「…ん…ッ!!…んく…ッ!!」
と、体をピクッ、ピクッ、と跳ねらせる。
「…こッ、…今度は…ッ、…何をする気だ…ッ!?」
「…その前に聞かないのか?」
「何がッ!?」
じっと力を見つめる万里小路。
「お前が今、どう言う状況になっているか、と言うことをだ」
すると力は、はぁぁ、と大きな溜め息を吐き、
「…両手も…、…両足も…。…縛られてるんだろ?」
と言った。すると万里小路は、ふむ、と言ったかと思うと、
「ようやく自分が置かれた状況を理解したのか…」
と言うと、
「やっぱり、お前、バカだな」
と言ったのだ。
「何だとおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!?」
その瞬間、万里小路が素早く起き上がったかと思うとその右手を伸ばし、力のガッシリとした2本の足の付け根部分に息づく、力の男としての象徴であるペニスと、その下に息づく2つの球体を力いっぱい握り締めたのだ。
「うぐッ!?」
突然、独特の鈍い痛みに襲われ、
「…ぁぁぁぁ…。…ぁぁぁぁああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、力は顔を真っ赤にし、目を大きく見開いて悲鳴を上げていた。
「…い…ッ、…痛てええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!止あめえろオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
レッドターボとして暴魔百族と戦う時に与えられるダメージよりはマシ過ぎたのだが、いかんせん、久しぶりに味わう痛みだ。思わず悲鳴を上げた。
「…ククク…!!」
万里小路はニヤニヤと笑いながら、その右手を握り締め続ける。
「…レッドターボも、ここだけは鍛えようがないか…?」
「…ぐ…ッ、…うううう…ッッッッ!!!!」
顔を真っ赤にし、目をギュッと閉じて懸命にその屈辱に耐える力。
その時だった。
力のそこから、急に痛みが消えた。
「…うぐ…ッ!?」
突然のことにビクンと体を大きく跳ねらせる力。
「…ぐ…ッ、…うううう…ッッッッ!!!!…んく…ッ、…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
痛みから解放され、思わず荒々しい呼吸をする。
「…お…、…前…ええええッッッッ!!!!」
力は万里小路を思わず睨み付けていた。だが、万里小路はフンと鼻で笑ったかと思うと、
「今日はたぁっぷりと、お前を甚振ってやる」
と言った。
「お前が、俺の奴隷になります、と言うまで、な!!」