毒牙 第4話

 

「…う〜ん…」

 今、洋平は鮮やかな青色の競泳用水着1枚の姿になり、敷物の上にうつ伏せに横たわっている。しっかりと肉付いた若々しい肉体を惜し気もなく披露し、洋平は引間のされるがままになっていた。

「…関節だけじゃなく、体中が硬いなぁ…」

「…痛たたた…!!

 引間が洋平の体をグイグイと押すと、洋平は顔をしかめ、声を上げる。

「…肩や背中がこんなに硬いなんて…。これで良く試合の成績上位をキープ出来ていたね」

「…毎日…、…ッ、…ちゃんとストレッチ…、…してる…ん…ですけど…」

 言葉を詰まらせながら洋平が言う。時折、呻き声を上げながら。

「…それが結構、甘いんじゃないかい?」

「…かも…、…しれ…ない…」

 引間がグイグイと洋平の体を押すたびに、洋平はビクッ、ビクッ、と体を痙攣させる。

「…これじゃあ、いくら頑張っても成績が今までよりも上がらないわけだよ…」

「…うううう…ッッッッ!!!!

 引間は洋平の肩をかなりの力で揉み、肩甲骨をゆっくりと押し広げて行く。それが終わると、今度は洋平の背骨から体の両側面へと伸ばすように広げる。

「…ショック…、…だなぁ…」

「え?」

 洋平の口から弱音が溢れ出す。

「…自分ではきっちりやっていたつもりなのに…、…まだまだ甘かったなんて…」

「…まぁ、それが人間と言うものさ」

 引間がニッコリと微笑みながら言う。

「…人間ってのは、いつもどこか甘いんだ。自分に厳しいなんて言うヤツもいるけれど、そんなの嘘っぱちだ。みんな甘くて、いい加減で、どこかで手を抜きたがる。そう言うものだよ」

「…あ…ッ!!

 その時、洋平がビクッと体を跳ねらせた。

「…せ…ッ、…先生…ッ!?

 顔を赤らめ、咄嗟に背後を振り返る。

「…?どうしたんだい、洋平君?」

 大きなレンズの眼鏡の奥の瞳がきょとんとしている。すると洋平は、

「…そ…ッ、…そこは…ッ!!

 と、慌てるように言った。

「…え?」

 引間の両手が洋平の右足の太腿の裏を鷲掴みにし、その指先が洋平の股の間の際どい部分に入り込んでいたのだ。

「…どうしたんだい、洋平君?」

「…え…ッ、…え…っと…」

 困ったような表情を見せる洋平。だが、引間はそんな洋平の足を強い力で揉み込んで行く。その刺激に、

「…あ…ッ!!…あ…ッ!!

 と、洋平は声を上げ、ビクッ、ビクッ、と上半身を跳ねらせる。

「太腿もこんなに硬いなんて…。…これじゃあ、キック力も十分に発揮出来ないじゃないか…!!

「…うううう…ッッッッ!!!!

 引間の両手が太腿の後ろからふくらはぎへと移動し、洋平は痛いのか呻き声を上げる。

「…じゃあ…」

 その時だった。

 引間が不意に立ち上がると、デスクの中をごそごそとやり始める。

「…先生?」

「ちょっと待ってて」

 引間の手には、何やら怪しげな形をした小さな容器のようなものがあった。どこかエキゾチックな、宗教儀式にでも使うのかと言いたくなるほどの形のそれにはトロッとした液体が注がれており、その液体の中にひも状のものが浸されている。

「…それは…?」

「アロマだよ」

 引間はそう言うと、トロッとした液体の中に浸されているひも状のものに火を付けた。

「…あ…」

 暫くすると、やや強めの香りが準備室の中に漂い始めた。

「…これ…、…は…」

 初めて嗅ぐ、やや不快になるほどの強い香り。だが、その香りに洋平の頭が次第にぼぉっとし始める。

「リラックス効果のあるアロマさ。…そして…」

「…あ…ッ!!

 その時、洋平はビクッと体を跳ねらせた。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 体中を覆うように垂らされるひんやりとしたもの。

「体も心も癒さないと、体中がほぐれないからね…」

 そう言いながら、引間は洋平の体に垂らしたオイルをゆっくりと伸ばし始めた。

 …グチュッ!!…グチュッ!!

 引間の両手が洋平の体に触れるたびに、グチュグチュと言う淫猥な音が響き渡る。

「…気持ち…、…いい…」

「そっか。良かった」

 そう言った引間の目がギラリと光る。

「…じゃあ…、…マッサージの続きをするよ…?」

 引間の両手が洋平の肩から大きな背中、腕をゆっくりと揉み込むようにし、オイルを伸ばして行く。

 …グチュッ!!…グチュグチュ…ッッッッ!!!!

「…痛い?」

 引間が尋ねると、洋平は首をふるふると左右に振る。

「…何だか…、…凄く…温かい…」

「このオイルには、温熱効果があるからね」

 …グチュッ!!…グチュグチュ…ッッッッ!!!!

 時に強く、時に優しく洋平の体を揉み込む引間の両手。その刺激とぽかぽかとした体の温かさに、洋平の意識は完全にぼぉっとし始めていた。

「…じゃあ、次は両脚だ…」

「…ッ!!

 くすぐったかったのか、洋平が体をビクリと跳ねらせた。

 …グチュッ!!…グチュッ!!

 上半身と同じように、引間の手によってオイルが両脚に伸ばされて行く。そして、時に強く、時に優しい刺激とぽかぽかとした温かさが洋平を包み込む。

 その時だった。

 引間の指が洋平の股の間へ伸びて来たかと思うと、股関節をグイグイと押し始めた。

「あッ!!あッ!!

 その痛みだけではなく、引間の指が自身の際どい部分に時折当たる。

「…せ…ッ、…先生…ッ!?

 思わず声を上げていた。

「ここも柔らかくしておかないとね」

「…そ…ッ、…そう…ですけど…ッ!!

 別の意味で顔を真っ赤にする洋平。

 …グチュッ!!…グチュグチュ…ッッッッ!!!!

「…ん…ッ、…んは…ッ!!

 オイルの影響もあり、引間の手がスゥッと流れるように洋平の脚を滑り降りる。そして、ふくらはぎをギュッと揉み込むと、

「んあッ!!

 と洋平が声を上げる。

「…あ…ッ!!…ああ…ッ!!

「痛い?」

 引間が尋ねると、洋平がガクガクと首を縦に振った。

「大丈夫だよ。すぐに気持ち良くなるから」

「…あ…ッ!!…んあ…ッ!!

 そして、引間の両手が洋平のふくらはぎから太腿の裏側へと戻り、股の間へ入り込む。そして、股関節をグイグイと押し込む。

(…や…、…ばい…!!

 その時、洋平は焦っていた。

 洋平のガッシリとした2本の足。その付け根部分に息づくふくよかな膨らみ。うつ伏せになっているとは言え、それが少しずつ熱を帯び始め、ゆっくりと頭をもたげ始めていたのだった。

 

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