毒牙 第9話

 

 翌日――。

(…あれは…、…何だったんだ…?)

 水泳部の更衣室で、洋平はぼんやりと考え事をしていた。

(…オレは…)

 水泳の記録が伸び悩み、洋平は焦りを募らせていた。どんなに柔軟体操やストレッチを試みても、一向に水を掻いたり蹴ったりする力が強くならないでいた。

 このままでは成績は下がる一方だった。笑顔を振り撒いてはいるものの、そればかりが頭を支配し、何に対しても集中することが出来ないでいた。

 そんな時だった。

 水泳部の顧問だった引間が洋平に対して柔軟体操の手伝いを買って出てくれた。そんな引間に言われるまま、いわゆる引間の部屋へやって来ると、そこでマッサージを受けた。

 きつく焚かれたアロマの匂いに頭がぼんやりとし、うつ伏せになった体中に垂らされたオイルが体を熱くした。そして、それが引間の手によってゆっくりと伸ばされた時、

(…気持ち…、…いい…)

 と思っていた。もちろん、マッサージなので痛みも感じる。だが、引間の細くしなやかな指がまるで何かの生き物であるかのように洋平の股の部分、際どい部分に滑り込み、そこをグイグイと強い力で押し始めた時、その刺激は強烈な電流となって洋平の体を駆け巡った。

(…ヤバい…!!

 その頃になると、洋平は下腹部の奥底にじんじんとした疼きを感じるようになっていた。そして、それは引間の指がグイグイと押すことによって込み上げ始め、洋平の男としての象徴であるペニスへ血液が一気に流れる形となった。

 それを知ってか知らないでか、引間は洋平に仰向けになるように言った。

「でッ、でも…ッ!!

 さすがに、引間に自身の醜態を見られたくない。まさか、たかがマッサージを受けただけで勃起してしまうなんて。けれど、引間は洋平を強引に仰向けにする。

(…あの時…)

 その時のことを、洋平は未だに信じられない思いでいた。

(…あの時…、…オレは…)

 自分の意思は仰向けにはなりたくないと思っていた。だが、気が付いた時には、洋平の体は独りでに仰向けになっていたのだ。それはつまり、引間の目の前に、光沢のある鮮やかな青色の競泳用水着の中心から頭を飛び出させた洋平の大きく勃起したペニスが晒されることを意味していた。

(…あの時…)

 きつく焚かれたアロマの匂いが頭をぼんやりさせていたのは間違いのない事実だ。

(…けど…)

 けれど、それが原因とも特定が出来ない。事実、引間のマッサージによって心地良い気分にさせられていたのは本当のことなのだから。

(…そして…)

 部室で椅子に腰かけたまま、ぼんやりと回想をする洋平。その頃になると、洋平の顔は真っ赤になり、体は小さく震えていた。

(…オレは…。…オレは…!!

 思い出すだけでも顔から火が噴くほどに恥ずかしくなる。

(…先生は…)

「元気だね、洋平君のチンポ」

 引間はそう言うと、洋平のそこを右手で優しく包み、グリュグリュと先端の柔らかい部分を刺激し始めた。その刺激に洋平は、

「ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!

 と、思わず悲鳴に近い声を上げ、更に上半身をビクンッ、ビクンッ、と大きく跳ねらせていた。

 

「…はぐ…ッ!?

 今思い出すだけでも凄く恥ずかしいのと同時に、洋平のそこがじんじんと熱くなり始めた。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 鮮やかな青色のジャージを身に纏っている洋平。そのガッシリとした2本の足の付け根部分が大きく膨らみ、テントを張っていた。

「…オレは…ッ、…オレは…ッ!!

 頭では嫌だと思っていた。同じ男である引間に自身のプライドとも言うべきペニスを触られた。しかも、そのペニスは大きく勃起しており、引間はその真っ赤に腫れ上がった先端部分を時に強く、時に優しく、まるで弄ぶかのように刺激を繰り返したのだ。

(…それだけじゃない…!!

 問題はその後だった。

 

「…これは、僕と洋平君との秘密だ」

 そう言うと、引間は洋平の鮮やかな青色の競泳用水着を一気にずり下ろし、洋平のペニスを露わにした。そして、それをゆっくりと口に含んだのだ。

「んああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 強烈な刺激が洋平の体を襲い、同時に、

 ジュボジュボジュボジュボッッッッ!!!!ジュボジュボジュボジュボッッッッ!!!!

 と言う淫猥な音を立てて引間の頭が上下に動く。そのたびに洋平のペニスは引間の口によってスライドされ、ビリビリとした快楽の電流が体中に流された。

「ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!

 本当は嫌なはずなのに、体が言うことを聞かない。暴れたくても暴れられない。それは目の前にいるのが同じ男性であると言う前に、引間と言う、洋平の水泳の能力を引き上げようと懸命に頑張ってくれる教師だからなのかもしれない。

「ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!

 ドクドクと込み上げて来る下半身のおぞましい感覚。

 そして。

「…イッ、…イクッ!!…イクッ!!イクッ!!イクイクイクイクッッッッ!!!!うおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 その頃になると、洋平は狂っていた。顔を真っ赤にし、目は虚ろ。首筋には血管を浮き立たせ絶叫し、腰をガクガクと上下に動かし始めた。そして、

 ドブッ!!ドブッ!!ドブドブドブドブッッッッ!!!!ドブドブドブドブッッッッ!!!!ドブブブブッッッッ!!!!

 と言う鈍い音と共に、洋平の真っ赤に腫れ上がったペニスの先端からは大量の淫猥な液体が引間の口の中に飛び出したのだった。

 ドブドブドブドブッッッッ!!!!ドブドブドブドブッッッッ!!!!

 その時、洋平のペニスはまるで自ら意思を持ったかのように何度も何度も淫猥な液体を噴き出させた。

「…と…ッ、…止まら…、…ねえ…ッ!!

 体の奥底から込み上げて来るドクドクとした感覚。

 ドブドブドブドブッッッッ!!!!ドブドブドブドブッッッッ!!!!

「ひがああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 洋平が再び絶叫した時だった。

 …ゴクッ!!…ゴクンッ!!

 引間の喉が大きく動き、洋平のペニスから溢れ出した淫猥な液体を呑み干していたのだ。

「…洋平君のだから、味わってみたかったんだよ…」

 そう言ってニッコリと微笑んだ引間。そして、その言葉に、洋平は体中がゾクゾクする感覚を覚えた。

 

 だが、引間の柔軟体操やマッサージは洋平の体に確実に変化をもたらしていた。

(…軽い…!!

 今日は何だか、水が軽く感じた。そんなに力を込めなくても両腕で水を掻くことが出来たし、両脚で水を蹴ることも出来た。そのせいか、いつもよりもタイムが格段に伸びていたのだ。これには洋平だけではなく、周りの部員達も驚きの声を上げていた。

 間違いない。引間が施してくれたマッサージが洋平の体を柔らかくしたのだ。

「…い、…いやいや…!!

 はたと我に返り、ぶんぶんと頭を左右に振る。

(…だからと言って…。…だからと言って、あんなこと…)

 同じ男に自身のペニスを触られただけではなく、口にまで含まれ、その刺激に絶頂に達してしまった。

(…しかも…ッ!!…誰にも触られたことがないのに…!!

 顔が真っ赤になるだけではなく、何とも情けない気持ちにもなって来る。言い換えれば、自身の童貞を引間と言う教師であり、男である者に奪われた、と言うことになる。

(…それなのに…)

 洋平は大きな溜め息を吐く。

(…先生の刺激を…、…気持ちいいと思ってしまった…)

 その結果が絶頂だった。

「…オレは…、…どうしたら…!!

 その時だった。

 ガチャッ!!

 部室のドアが開き、その者を見た途端、洋平は顔を真っ赤にしていた。

「お待たせ、洋平君」

 

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