毒牙 第10話
「お待たせ、洋平君」
まだまだあどけなさを残す顔。その顔に似つかわしくないほどに大きなレンズの眼鏡を掛けた引間が部室へ入って来たのだ。
「…せ…ッ、…先生…ッ!?」
「…?…どしたの、洋平君?」
ニコニコと微笑んでいる引間。心なしか、その顔が赤らんでいるようにも見える。
「…い…ッ、…いやぁ…」
適当に愛想笑いを浮かべ、洋平は椅子から立ち上がる。
「じゃあ、今日もストレッチをしようね」
そう言って引間が洋平に近付いたその時だった。
「えッ、えっとぉ…」
俄かに洋平が後退る。
「…?…洋平君?」
当然のことながらきょとんとする引間。そんな引間に対し、洋平は、
「あッ、あの…ッ!!」
と妙にうろたえる。すると引間は何かに気付いたかのような表情を浮かべると、
「…もしかして…。…昨日のこと、気にしていたりする…?」
と言った。
「あッ、あのッ!!」
妙に慌てている洋平。無理もない。いきなりあんな展開になってしまったのだから。
「…オッ、オレッ!!…まさか、勃つなんて思ってなくて…」
「それは僕のマッサージが気持ち良かったからだろう?」
「そッ、そうなんですけどッ!!」
洋平の顔が更に真っ赤になって行く。
「…チンポが勃ったところを誰かに見られたことなんてなかったし…。…な、何より、誰かにそんなチンポを触られたことなんてなかったし…」
「普段、クラスの子達とふざけ合って触ったりしたことはないのかい?」
「あッ、ありませんよッ、そんなのッ!!」
「ムキにならなくてもいいじゃない」
ニコニコと微笑んでいる、いや、意地悪い笑みを浮かべている引間。
「でも、僕に触られて、刺激されて、気持ち良かったんだろう?」
「うああああ…ッッッッ!!!!」
ゾクゾクと背筋に何かが走る感覚がして、洋平は思わず声を上げ、その場に蹲った。
「…フフッ!!」
引間はそんな洋平の背後へ回ると、洋平の両脇に両手を入れた。そして、グイッと持ち上げたのだ。
「うわッ!!」
無防備な洋平の体がグイッと持ち上がる。
「…せ…ッ、…先生…ッ!?」
こんな華奢な体の引間のどこにそんな力があるのかと疑いたくなるほど、洋平の体をやすやすと持ち上げる引間に驚いていた。
「…大丈夫だよ、洋平君…」
「…せ…、…んせ…」
ドキドキと心臓が早鐘を打っている。引間は今、洋平の背後から両腕を前へと回し、ジャージ越しに洋平の体をさわさわと撫でている。その細くしなやかな指が動き、ジャージ越しでも洋平の筋肉質な体を撫で回すたびに、
「…ッ!!…んく…ッ!!」
と、洋平は呻き声を上げ、体をビクッ、ビクッ、と跳ねらせる。
「…せ…ッ、…せん…、…せぇ…」
「大丈夫だよ、洋平君」
その指が洋平の筋肉質な両胸にぷっくりと浮き出ている2つの突起に触れた時だった。
「あッ!!」
体中にビリビリとした電流が流れたような感覚がして、洋平は思わず大きな声を上げる。
「…それは自然な感覚だよ、洋平君…」
「…せ…ッ、…んせ…。…んは…ッ!!」
引間の細くしなやかな指が洋平の両胸の突起をクリクリとくすぐるように動く。くすぐるように小刻みに刺激したかと思えば、その周りをねっとりと撫で上げ、そして、キュッと摘まみ上げる。
「んあッ!!ああッ!!ああッ!!ああッ!!」
その刺激に、洋平は短い声を上げ、体をビクビクと痙攣させる。
「…気持ちいい、洋平君?」
「…き…ッ、…き…ッ!!」
気持ち良くなんかない、そう言い掛けた時だった。
(…あ…、…れ…?)
頭がぼぉっとする。ふわふわとした、そして、何だか心地良い感覚が洋平を包み込む。
「…せん…、…せぇ…」
その頃になると、洋平は顔を赤らめ、目を虚ろにし、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返していた。
「…洋平君の体、本当に逞しいね。胸板も厚いし、腹筋なんてバッキバキだ…。…それに…」
「…あ…あ…あ…あ…!!」
引間の右手がゆっくりと洋平の上半身を滑り下りて行く。
「…せッ、先生…ッ!?」
その右手を咄嗟に掴もうとした。だが。
(…あ…、…れ…?)
その時、洋平の体はまるで金縛りに遭ったかのように身動きが取れなくなっていたのだ。
「…洋平君…」
一言だけそう言った引間の右手が、洋平の下半身、ガッシリとした2本の足の付け根部分で大きく勃起しているペニスとその下に息づく2つの球体をそっと包み込んだ。その途端、
「んああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と洋平は大声を上げ、体を仰け反らせていた。
「…あ…ッ!!…あぁ…ッ!!」
「…洋平君のチンポ…、…凄く硬い…。…それに…、…凄く熱い…!!」
「…あ…ッ!!…ああ…ッ!!」
ドクンッ!!ドクンッ!!
心臓が大きく高鳴っているのが分かる。引間の右手が洋平のそこを愛撫する。まるでマッサージをするかのように優しく揉み込んだり、大きく勃起しているペニスを握ってゆるゆると上下に動かしてみたり。
「…気持ち…、…いい…」
目を虚ろにし、はぁはぁと呼吸を荒くしている洋平がぽつりと零す。
「もっと気持ち良くなりたい?」
背後から引間の囁くような声が聞こえる。すると洋平はコクンと頷き、
「…気持ち良く…、…なり…たい…」
と言ったのだ。
その時だった。
「…じゃあ…」
「…っあ…ッ!!」
突然、引間の体が洋平の背後から離れ、引間の右手は洋平のそこから離れていた。それはつまり、それまでの刺激を止められることを意味し、
「…あ…ッ!!…んん…ッ!!」
と言う声を上げて、洋平は腰をくの字に折り曲げ、体をもじもじとさせた。
「…せ…ッ、…先生ぇ…」
「…フフッ!!」
意地悪く笑う引間。
「じゃあ、この続きは柔軟体操の後にね!!」
引間はそう言うと、
「先に準備室に行って準備しているから、洋平君はチンポが落ち着いてからおいでよ?」
と言い、引間は洋平を残して部室を出て行った。
「…う…ッ、…うううう…ッッッッ!!!!」
腰をくの字に折り曲げ、顔を真っ赤にした洋平は相変わらず両脚をもじもじとさせたのだった。