毒牙 第11話
「じゃあ、この間のように両足を前へ伸ばして座って」
準備室のような小さな部屋。薄暗く灯され、アロマの強い匂いが漂っている。
(…また…、…だ…)
その強い匂いに、洋平は頭がぼんやりとする感覚を覚えていた。
今、洋平はあの鮮やかな青色の競泳用水着1枚の姿になっている。そして、筋肉質な体を惜し気もなく見せていた。腕、脚、胸、そして、腹筋。うっすらと筋肉の割れ目が見えるそれが薄暗い部屋の中で神々しく輝いているようにも見えた。
「相変わらず、肉付きが凄いね!!」
引間はそう言うと、洋平の上半身をそっと撫でる。その刺激に、
「…ッ!!」
と、洋平はビクッ、と体を跳ねらせた。
「…せッ、先生ぇ…ッ!!」
顔を赤らめ、困ったような表情を浮かべる洋平。そんな洋平に対し、引間は、
「…フフッ!!」
とからかうように笑うと、
「じゃあ、始めようか」
と言い、マットの上に両足を投げ出して座った洋平の背中をグイグイと前の方へ押し始めた。
「…痛てててて…!!」
洋平の顔が苦痛に歪む。だが引間は、
「凄いよ、洋平君。昨日よりも体が伸びるようになったね…!!」
と言った。
(…確かに…)
それは洋平も感じていたことだった。昨日と言うたった1日の、たった数時間だけのことなのに、固かった体が急激に柔らかくなったような気がする。その証拠に、柔軟体操をやっても随分と体が楽にしなるようになったと思っていた。
「…先生の…、…お陰…ですよ…」
背後から引間にグイグイと押されながら、洋平が答える。
「…先生…って…、…整体師か…何か…の…、…資格も…持っていたり…、…する…ん…です…、…か…?」
「いや、持ってないけど?」
引間が答える。
「僕はただ、洋平君の秘めた力を引き出してあげているだけだよ」
「…オレの…、…秘めた…力…?」
「そう」
引間の嬉しそうな声が頭上から降り注ぐ。
「昨日も言ったけど、人間なんて自分自身に甘いんだ。甘すぎるから、洋平君も柔軟体操を適当に済ませていた。自分を痛め付けろとは言わないけれど、このくらいでいいや、と言う気持ちが、本来なら引き出せるはずの力を引き出せないでいたんだ。僕はただ、それを引き立たせてあげたくて、ちょっと強めの柔軟体操をやっただけだよ」
そう言った時、引間は洋平の目の前にしゃがみ込み、目線を合わせるようにした。その大きなレンズのメガネの奥の瞳がキラキラと輝いている。
「洋平君。今日の練習で、体が軽くなった感じはしなかったかい?」
「…あ…、…あぁ、それなら…」
洋平がニッコリと笑う。
「…プールの中の水が物凄く軽くて、そんなに力を入れなくても腕で掻いたり、脚で蹴ったり出来たような気がします」
「それは良かった。昨日の柔軟体操とマッサージの効果があったってことだね。…それに…」
「…え?」
その時、引間は洋平の両肩に両手をかけていた。そして、洋平をゆっくりと押し倒したのだ。
「…先…、…生…?」
ドクンッ!!ドクンッ!!
不意に洋平の心臓が大きく高鳴り始める。
「…これは、僕と洋平君とだけの秘密だよ…」
「…っあ…ッ!!」
その時、洋平は目をカッと見開き、体をビクリと跳ねらせた。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
「…フフッ!!」
引間の右手が洋平の2本の足の付け根部分に息づくふくよかな膨らみをそっと包み込んでいる。
「…もう、期待しているのかい?」
「…そッ、…そんな…わけ…」
その時だった。
(…あ…、…れ…?)
突然、意識がぼんやりとし、洋平は虚ろな視線を宙に投げ掛けていた。
「…フフッ!!…洋平君のチンポ、僕の手の中でビクビクしてる…。…あ、凄い凄いッ!!ムクムクと大きくなって来たよ…ッ!!」
「…うああああ…ッッッッ!!!!」
体がかあっと熱くなり、全身の血液が物凄い勢いで循環するような感覚がする。そして、その血流は洋平の中心部分へ一点集中し、自身の男としての象徴であるペニスが急速に大きくなって行く感覚がした。
「…せ…ッ、…先…、…生…ッ!!」
「…フフッ!!…エッチだなぁ、洋平君は…」
そう言いながら、引間は洋平のペニスとその下に息づく2つの球体を包み込む右手をゆっくりと動かし始める。
「…あ…ッ!!…あ…ッ!!」
ピクッ、ピクッ、と洋平の体がはねる。
「…フフッ!!…洋平君、たったこれだけの刺激なのに感じちゃってるのかい?」
引間の細くしなやかな指が洋平の大きく勃起したペニスとその下に息づく2つの球体を優しく愛撫する。
「…あう…ッ!!…ん…ッ、…んんんん…ッッッッ!!!!」
亀頭の括れの部分を手首近くで揉み込まれ、同時に指先は2つの球体を優しく揉み込むように愛撫する。その刺激がビリビリとした心地良い電流となって洋平の体に流れ、洋平は艶かしい喘ぎ声を上げ、体をビクッ、ビクッ、と跳ねらせる。そして、引間の指が洋平の股の間奥深くへと入って行くと、
「うああああ…ッッッッ!!!!」
と、洋平は思わず体を仰け反らせる。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
ブルブルと体が震え、引間の刺激を甘受する。そして、引間の指がスルスルと洋平のそこを這い上がり、ペニスの裏筋を撫で上げ、先端に辿り着くと、その柔らかな赤い部分をクリクリとくすぐるように刺激する。その刺激が更にビリビリとした電流に変わり、
「んああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、洋平が大きな声を上げていた。
「…せ…ッ、…先…、…生ぇ…」
今にも泣きそうな、いや、目尻に涙を溜めて洋平が引間を見つめる。
「じゃあ、取り敢えず、体から柔らかくして行こうね」
そう言った時、引間は左手であのオイルが入った容器を取った。そして、それを洋平の上半身へトロトロとかけて行く。
「っあッ!!」
生暖かいオイルが洋平の体を流れ落ちて行く。その刺激がくすぐったく、洋平はビクリと体を跳ね上げた。
…グチュッ!!…グチュッ!!
引間は無言のまま、洋平の体の上でてらてらと淫猥に照り輝いているオイルを丹念に伸ばして行く。
「…じゃあ、行くよ?」
そう言いながら、引間はそのオイルを洋平の上半身にゆっくりと塗りたくり始めた。
…グチュッ!!…グチュッ!!
洋平の筋肉質な胸板ときれいに割れている腹筋にそれが染み込むように馴染んで行く。
「…あ…、…あぁぁぁ…」
その心地良さに、洋平の意識はぼぉっとし始める。
「…気持ちいい、洋平君?」
引間の声が聞こえた時、洋平はコクコクと頷き、
「…気持ち…、…いい…!!」
と答えていた。
「いいんだよ、洋平君」
その時、引間の目がギラリと光った。
「…もっと…。…もっと、たぁっぷりと気持ち良くなっていいんだよ…!!」
そう言った引間の指が、洋平の両胸の突起に触れた時だった。
「んあッ!!」
突然、ビリッとした電流が流れ、洋平は体をビクリと跳ねらせていたのだった。